幕間 コメント(二)

 第二十回 大鷄島文学賞


 佳作『青い檻が破れてから』柳間詩織


 “佳作の『青い檻が破れてから』は、若い作者ながら流麗な文章は目を引くものがあった。時系列の入れ替えや人称の使い分けなど(技巧に酔いすぎている箇所も見られたが)、挑戦的な作品づくりは強く心に残った。

 その一方で、主人公の造形はいささか凡庸。世界を一歩引いたところから静かに見ている、思春期の少女としてはリアルな造形かもしれない。しかし、終始現実に徹する小説は、読者をときに息苦しくさせる。真摯な作品づくりの中にも、ちょっとした遊び心が必要ではないだろうか。

 美しい物語を書きたいという気持ちは、つくり手にとって諸刃の剣である。自分一人だけの世界で完結させてしまわないように、次はもっと大きな物語に挑んでみてほしい。

 今後の飛躍に期待する。„

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る