滅びゆく世界で『無能生産者』認定だと!? ~コミュニティー先で強制労働なんて絶対に許さん! 復讐を果たし、成り上がる!~
@AmorePonta
『アポカリプス:ドロシーちゃんとの出会い!』世界崩壊編
第1話 ゲームから目が離せない
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これは自分ベルシュタインがある女の子と一緒に、『コミュニティードヨルド』に行き着くまでのお話
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自分はヨーロプア大陸西部の小国、チャコローナの出身。
西暦2013年の今となっては、広大な壁に囲まれた城塞都市『コミュニティードヨルド』で強制労働させられている。
その1年前までは、チャコローナの片田舎の町に両親と共に暮らしてた。
当時、自分は1日の大半をゲームに費やす自堕落な日々を送っていたのだ。
1日中ぶっ通しで、ゲームをやり続けることができていた時代だった。
この頃は、一体いつの物だかわからない書類やらゴミやらが散乱した部屋で、黒いテトラポッドのような形をしているコントローラーを握りながら、1人でずっとサッカーゲームに興じていた。
そして今まさに、自分はそのサッカーゲームから目が離せない状態だ。
昼過ぎに目が覚めてから約2時間少々。ゲームを起動してから、早くも11連敗を喫している。
その泥沼とも言える負のスパイラル現象から抜け出すべく、ここでなんとしてでも1勝をもぎ取り、ゲームの試合運びもキリがいいところまで。
超絶理想的なゲーム展開を1試合通して行えるところまで、やりきるつもりだった。
完璧なゲーム内容で試合を終えるまで妥協はできない。
そんな内容で試合を即刻終えられたら、キリよく次のステップに進めるのに…。
しかし現実はそう甘くない。なかなか自分の思い通りにはならない。
画面上のリアル選手をコントローラーで自在に操れたとしても、自分が思った通りに彼らは動いてくれない。
ワンテンポ動きが遅れ、ボールを奪い返されたり。パスがずれたり。パススピードが遅くて相手ディフェンダーにカットされたり。
それらがなんとももどかしい。
顔の見えないお相手とのオンラインマッチ。
すでにスコアは2対0。
お相手の前半10分からの怒涛なゴールラッシュで、こちら側は完全なる劣勢に立たされていた。
自分もそんな状況を挽回すべく相手ゴール手前まで、ボールを何度も運んでいる。
しかしその都度、相手ディフェンダーにあっさりとボールを奪われ、カウンター攻撃を喰らってしまっている。
そしてまたもやピンチ。このままだとまた点を取られてしまう。
「「さあ!ボールがペナルティーエリア付近まで入ってきた!」」
お相手が自陣のペナルティーエリア、ゴールネット手前まで侵入してきた。
ゲームの実況もそのことを伝えている。
「マーフィー!インターセプトだ!」
決定機の演出を阻止するため、ボタン入力して、ボールを奪いにいった。
しかし…
「「おお!エルドアンが見事なテクニック!!ディフェンダーを1枚はがした!」」
「あっ!やばい!やっちまった!」
CPUの選手にいとも簡単にマークを外され、お相手に決定機をつくらせてしまった。
そしてすかさずゴールを狙う態勢に入られる。
「また打たれる!今度こそ止めてくれ!頼む!」
画面越しから味方のCPUに対し、そう祈りを捧げるも、残念ながら彼らにその願いが届くことはなかった。
俊敏な動きで放たれたシュートは、無常にもゴールネットに突き刺さってしまったのである。
「「決まった~!ゴールゥ!ゴラッソォ!FCルーデンヒルツ!これで3対0!」」
「おい!何してんだよ!ディフェンダー!それにキーパーまで!反応しろよ!それくらいさぁぁ!!」
自分はブロックすらできなかったディフェンス陣含め、シュートボールに対して全く反応できなかったキーパーをも責め立てる。
「「力の差はもはや歴然!FCルーデンヒルツ!格下相手をフルボッコだぁ!」」
「あぁぁぁぁぁ!!!」
前半早々、屈辱の3失点を喫してしまい、その直後にベルシュタインはゲーム機のLANケーブルを引っこ抜き、ネット回線を切断した。
まもなくしてサッカーゲームのオンラインマッチは終了する。
画面には切断負けの文字が映し出され、回線切断したことによるゲーム側からのペナルティが課せられた。
「あぁぁぁぁ!!!くそくそくそ!」
この頃の自分は、もうそれはそれはゲーム機のコントローラーに対して殴るなり、蹴るなりを頻繁にやっていた。
勝ったときはいいのだが、負けたときはいっつもこんな調子だった。
コマンド入力が遅いだの、CPUの動きが悪いだの、サッカーゲームに対するありとあらゆる不満を、自分以外誰もいない自室にて、1人漏らしていた。
「フルパフォまでされた!くそくそ!散々煽りやがってぇぇ!そんなことやって楽しいか!?人としての品性を疑うねぇ!!」
腹の虫はなかなか治らない。
「お相手、絶対SNSで拡散してやるからな!覚悟しておけ!」
っとそんなことを威勢よく言い立てても、自分のツイッターなりインスタのフォロワー数はせいぜい3程度。
俗に言うインフルエンサーでもなんでもなかった。
自分のそんなわずかばかりのフォロワーは友人でも知り合いのアカウントですらない。
通勤、通学の片手間で小遣い稼ぎができると謳ったもの。
ボンキュッボンな写真をトップ画にして、恋に迷える羊を誘惑しているようなもの。
そんなアカウントたちが、唯一の自分のフォロワーだった。
……拡散力はたいへん乏しいと言えるだろう。
「もういいや。次はこのゲームでもしとこっか…」
サッカーゲームの回線をぶった切ってから、次はとあるロボットRPGのゲームをすることに。
ソフトを入れ替え、テレビ画面には『ロボット・モンスター』の文字が映し出される。
さあ、ロボットのパーツ厳選の始まりだ!
それから6時間もそのロボットゲームをやり続けた。
ロボットのパーツ集めとそのパーツの組み合わせに随分頭を悩まし、割とそれだけの時間がかかってしまったのである。
大学の4年間もこのようなゲーム漬けの毎日を送っているうちに、あっという間に過ぎ去った。
自分には友達と言った高尚な存在は、この年齢を迎えても、未だにいなかった。
何もできず、何も生み出さず、日々惰性でやることといえば、ゲームに打ち込み、画面上にいるサッカー界のスター選手をコントローラーで操作することのみ。
暇な時間は全てゲームへ費やし、消えていった。
大学の4年間は、まさに何もやらなかったことづくしだ。
卒業後、別にどこかに就職するわけでもなく、それからなんとなく家に籠るようになって、3年の月日が経過していた。
同年代の連中は自分がこうして家でゲームをしている間、上司にへつらい、媚びを売り、ひたすらおべっかしているのだろう。
どんな形であれ、社会の出世競争に今日も彼ら彼女らは担ぎ出され、しのぎを削りあっている。
一方自分は卒業まで就職できなかったからといって、たいして何もせず、家でひたすら好きなゲームをやっているだけ。
このようなことをしていても金になるわけもなく、世間の連中がこの自分の姿を見れば、だれもがうんこ製造機として認定し、蔑むに違いない。
世間と隔絶された生活環境に身を置き、自分は来る日も来る日も自堕落な時間を過ごしていたのである。
「ふぅ~。やっとパーツ厳選が終わったぞ…」
ロボットの厳選がついに終わり、満足したところでゲームの電源を落とす。
「…うわ。もうこんな時間か」
自室の窓を見ると、すでに日が昇っている。
ゲームに没頭してたら、いつの間にか朝になっていた。
昼夜逆転した生活を3年も送っていたためか、昇ってくる朝日がいつの間にか自分の就寝の合図と化していたのである。
「朝になったことだし、そろそろ寝るとしますか」
すぐさまベッドに潜る。
お昼過ぎまでの約8時間、睡眠をとり、起床するとまた前日の繰り返しで、ゲームに興じることだろう。
明日も明後日も明明後日も、この平穏で穏やかな生活が崩れることはないとずっと信じていた。
しかし、そんなごく当たり前だった日常は、ついにその日をもって終わりを迎えたのである。
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