少年兵は帰還する ②
7日間というのは短い。
それでも悪ガキたちは何とか見られるぐらいには列を成し、統一する意思を見せ、自分たちが自分たちの町を守るのだという自負を心に刻んだのである。
ロエンにとって『この中で一番強い』というピラミッド型のグループがバラバラに存在しているのが当たり前だったのに、それがエブランというさらに上位の存在のおかげでひとつに纏まり、あまつさえ協力して行動させることに成功した。
それは成長しきって別の組織に所属している大人がまったく違う環境に放り込まれるよりも柔軟に、そして未熟さで伸びていく子供だったからこそかもしれない。
彼らのボスである強者が、さらに強者であるエブランに屈して従う姿勢を見せたためかもしれない。
もっと幼い頃からこっそりと憧れていた領都の治安を守る巡回兵が、わざわざ自分たちを鍛えるために派遣されるという情報に心が躍ったせいかもしれない。
そのどれでもいい。
たぶんロエンが祖父と父に育てられたこの家を離れたら、簡単に帰れなくなる。
そんな予感がして、この地域だけでなく祖父自身も守られて過ごせるのだと知って、少しだけ心が軽くなった。
「んじゃあ、お孫さん預かりまっす!」
「ああ……お願いします」
ニィッと元気良く笑って敬礼するエブランからロエンへ、そしてロエンからまたエブランに視線を動かした祖父は少しだけ目を潤ませ、深々と頭を下げた。
帰宅した時にはてっきり領主様の家から「もう二度と顔を見せるな」と言い捨てられて置いて行かれるのだと思ったが、今は数人の兵隊たちと共に並んで祖父の挨拶を受けている。
昨夜、突然薄汚れた感じでドカドカと雪崩れ込んできた彼らは、何故かエブランに案内されて家の中庭にテントを張って寝床をあっという間に拵え、せめて汚れと疲れを流してくれと祖父が商会の者たちに使わせている炊事場と洗濯室、そして浴室で存分に寛いでいた。
「いやぁ、宿舎であいつらに『くせぇくせぇ』って言われなくて済むなんて、ずいぶんありがたいなぁ!」
「おぉ~い!誰かこっちの洗濯物乾かしてくれ」
「次のやつ、誰だ?新しい湯を入れといたからな!」
多少でも魔力持ちばかりが住んでいるおかげで馴染みがなかったわけではないが、さすがに一気に洗濯物を乾かしてしまうほどの強力な魔術展開や、水魔法を操った後に火魔法を使える者がお湯に変えてしまったりと存分に魔力を揮うのをロエンは唖然と見ていた。
「お前も正式に領兵に加わったら、こんなのよりもっと大掛かりにやるのを見れるからな!」
「お、俺も……?」
「ああ、当たりまえだろ?まあ……お前の場合は、領都じゃなくって、アーウェン様の従属で辺境に行く可能性が高いけどな」
「え?な、何で……?」
「ん~……まあ適性がなきゃ、大隊長が違う所属を考えられるだろうけどな」
「大隊長……?」
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