少年兵は恐れる ②
そんなロエンの恐怖を伴った予想を裏切り、エブランは明るく祖父に挨拶をするとそのまま上がり込んで、孫の突然の帰宅に戸惑う祖父を相手に酒盛りを始めた。
しかもサラッとロエンが謹慎処分になったことまでバラしてしまう始末。
「こんのバカ孫がぁ────っ!!」
「ごめっ!ごめんってば!ごめんてば、祖父ちゃん!!エブランさんも何でこんな時にばらすんだよぉ──っ?!」
「お~?悪ぃ悪ぃ!まっさかお前のじい様がこんな現役張りの力持ちとは思わなくってよぉ~!」
ゲラゲラとエブランは笑うが、酔っぱらって力加減の無くなったデンゴー・ファゴットは大斧を振り回せる腕力を持って、思いっきり孫の頭に拳骨を振り降ろしている。
まともに喰らうつもりもないので素早く避けているが、ついに襟首をつかまれて祖父の拳にゴンッと鈍い音を立てられた。
目が覚めたら忘れていてほしいが、祖父は酔ってもその間話したことをちゃんと覚えているタイプの酒飲みであるため、翌朝も怒られることは目に見えている。
「おっしゃ~!一発喰らったな!んじゃあガキはもう寝ろ!さあ、じい様!俺と飲み比べだ!」
「おおっ!儂たち商人は、酒は飲んでも飲まれやせんぞぉ!若いからって、嵩くくったら泣きを見るぞぉ!」
「何おぅ?俺様もターランド領兵の中では五本の指に入る酒豪だからな!酒はまだまだ持ってきた!わっはっはっはっは──っ!!」
「おおー!こいつぁ、アッシュ産の上物じゃあないかっ!」
「おうよ!領主様からの心尽くしでぃ!」
「そっちは南のキートーリン産のワインかっ?!北部じゃあめったに飲めない代物だ!」
「じい様、目が肥えてるねぇ!これの味がわかるってこたぁ、舌も相当なもんだ!嬉しいねぇ!さあ飲もう!」
「なぁに!若い時に行商で一本だけ分けてもらったんじゃぁ。ばあさんと大切に飲んでなぁ……」
「おっ!じい様の若き日の話かっ?!ロエンのばあ様ってどんなだよ?美人かっ?」
「おおよっ!美人だとも!婚姻二十年の時に描いてもらった儂とばあさんの肖像画があるぞい!」
がっはっはっ!わっはっは!と賑やかに笑い、酒瓶のふたを開け、思い出の肖像画からロエンの幼い頃のやらかし話まで次々と肴にしだしたため、ロエンはエブランに言われた通りに自分の部屋へと逃げ込んだ。
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