少年は疑いの目で見られる ③
それは言わば次代の家令はギンダーではなく、飛び越して自分よりずっと若い少年に屋敷中の鍵が渡されることを意味している。
いずれは本来の家令であるバラット・エイブ・トゥ・ダレニアがこの領都邸に呼び戻されることはあると覚悟はしているが、それはあくまでも自分への地位譲渡の時だと思っており、そしてその後に彼の息子であるロフェナ・グラウ・トゥ・ダレニアに厳かに『次代の家令を務めよ』と言い渡すはずだった。
それなのに──
「いえ……あの、やはり半日と言えど、家令代理のわたくしがお休みをいただくというのは、業務に差しさわりが……」
「そうかな?私はリグレと共に王都に戻るが、またすぐに戻る予定だ。妻はエレノアとアーウェンとともに二年間ここに留まる……その間ずっと休みを取らないわけにもいかないだろう。私が発つ前にきちんと休みを取ってほしい」
「は…はい……」
そう言われてしまえば、自分の有能さを証明するためとはいえ、無理やり業務についていることはできない。
むしろ適正に休みを取れない限度知らずと思われるか、下手をしたら『家令代理』という役目から降りるようにと通達してされてしまう恐れもあった。
それは避けねばならない。
「わかり、ました……では、明日は半日のお休みをちょうだいします……」
「ああ、そうしてくれ。最近は何か上の空だったようではないか……やはり身を固める時期を迷っているのか?それならば……」
「あっ!い、いえっ……」
そういうわけではない。
むしろ城下町の一画に屋敷を構えているテリエーヌ男爵家の次女であるスザリス嬢とは、実のところ少し折り合いが悪いのだ。
それは自分より十歳も若いロフェナに対抗心を燃やして、自分の主人に認められたいという気持ちが昂じて、居丈高な態度を婚約者に取ることが少なくなったせいである。
だがそんな私情は押し隠し、とりあえず主人には作った笑顔を向け、感謝を述べた。
ギンダーが考えたのはたった半日といえど職務を離れ、アーウェンとカラがなにを企んでいるのか、見極めることができるかもしれないと考えたためでもある。
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