伯爵夫妻は子供たちと休暇を楽しむ ②
まるで草原のようだが、見渡す限りがこの城の敷地である。
丁寧に手入れされている芝生がチクチクしないようにと分厚く織られた敷物が敷かれ、その真ん中にバスケットが置かれた。
中から皿やグラス、カラトリーの他にナプキンまで取り出されるのを、エレノアはキラキラとした目で見ている。
アーウェンは手伝うべきかどうなのかとオロオロしているが、リグレは『慣れています』というようなすまし顔でセッティングが終わるのを待っていたが、ラウドとヴィーシャムは子供たちとは別に簡易テーブルと椅子がそれぞれ用意され、ゆったりと腰掛ける。
子供たちのテーブルは食器が入っていたバスケットで、その上に厨房がとっておきと用意したサンドイッチやキッシュが用意され、それぞれに果実水が注がれて食事が始まった。
遠くには森林が見え、皆が腰を据えているところからはまだ見えないが、領都を流れる大きな川から人工的に引かれた小川もあった。
「あとで水遊びをしよう。何やら庭師が子供たちのためにと、川の一部を掘り拡げて小さな池を作っているらしい。川には魚がいるらしいから、釣ってみるのも面白かろうな」
「そんなところがあるんですか?」
「ああ、リグレが小さい時はまだ出来上がっていなかったが、ようやく治水工事が完了し、こちらの造形にも手を入れられるようになったのだ。残念ながらまだ完全に出来上がっていないので池は見学をするだけだが」
それでもやはり嬉しくなって、リグレがキラキラと目を輝かせる。
アーウェンにとっては『川』というものも『池』という物もよくわかっておらず、エレノアがリグレにつられて期待するような顔をするのを真似るだけだった。
だがその場所に行きたいとソワソワしているのはわかるが、父が移動の号令を出さないため、子供たちはどれくらい早く自分の皿の物を食べられるかと競うように食べながら笑う。
気が急いてもやはり美味しい昼食なのは、こんないい天気の日に『家族』が一緒にいるせいかもしれない。
だがどんなに美味しい食事でも永遠に続くわけではなく、いよいよお待ちかねの水遊び──の前に、ゆっくりとまた散歩が再開された。
ひとつには食べたばかりで走り回るというのは身体によくないと一般的に知られており、またもうひとつには川までの距離が少しあり、せっかくならばリグレとアーウェンをそれぞれ自分の横につかせ、ふたりの話に耳を傾けたいと思ったからだった。
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