伯爵は義息子の前で剣を揮う ②

「ふぁ………」

「スゲェ………」

アーウェンがポカンと口を開け、カラは思わず普段の言葉遣いに戻ってしまうほど、目の前の光景は圧巻だった。

一見すればターランド伯爵家専属の兵の中でも平均的な体形と身長にしか見えないラウドだったが、同時に飛び掛かってきた三人を一気に弾き飛ばす。

返す刀で後ろから突き込んできた二人の剣をそれぞれ叩き落し、勢いよく蹴り飛ばす。

そのままの勢いで前方にいた者と切り結んだが、衝撃で互いの模擬剣が弾き折れる。

その瞬間に短くなった剣を放り捨てることなく、それぞれ魔力を纏わせて氷と雷の剣を構えた。

「ほぉ……大隊長に感化されたか……雷属性と聞いていたが、物現化は初めてだな」

向き合っている男は両手で剣を構えたが、少し顔色が悪い。

対するラウドは片手を伸ばして挑発するように揺らすが、汗ひとつかいていなかった。

「では、来い」

「はっ…はいっ!」

そう促されて勢いよく踏み出し──

「あ…っれ……?」

「体力だけでなく、精神力と魔力維持の訓練も怠るな!」

初めは勢いよく電気の粒を飛ばしていた剣はだんだんと元の形に戻っていったのだが、振りかぶろうとした瞬間にふわっと消えた。

ついでに魔力が消えた剣を危なげなく避けたラウドは氷剣の温度を上げて水に変え、そのまま倒れ込んだ兵の後頭部にぶちまける。

「ま…参り……ました……あり…が……」

最後まで言い切ることなく、一番最後までラウドと対峙していたその兵は地面に沈んだ。



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