ヘッドフォン

 僕は何時だって、青いヘッドフォンを装着していた。

 全ての音から隔離されるのが心地良かった。


 人と人のざわめき

 僕への嗤い声

 退屈そうに指針が刻む。


 世界の音が金属音に変換されて、頭の中をく。

 神影蒼は古本の匂いが好き。彼は新品の本の匂いで頭痛を起こす。


 机に積まれた「誰かの」世界を辿る毎日は悪くないものです。

 机に積まれた「自分の」世界を歩く毎日は悪くないものです。


 そんな時だった。ふと僕はヘッドフォンを外した。

 見知らぬ君が立っていた。

「だれ?」

「初めまして。俺の名前は」

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