転生した話

 フェアリーリング。芝生が輪のような形に色濃く繁茂はんもしたり、逆に枯れたりして、その跡にキノコが生える現象。西洋では妖精がこの輪を作り、その中で踊るという言い伝えがあるらしい。


 「妖精が作った輪の中に入ると異世界に行ける」

その妖精の輪とやらを見つけてしまった。

現実世界に飽き飽きしている僕は、とにかく環境を変えたかったんだ。

向こうはどんな場所だと思う?壮大な土地が待っているだろうか。

期待に胸を膨らませ、そこに踏み込んだ。


 唐突にやってきたのは吐き気に倦怠感と動悸、ふらつき。

汗が異常に出る。雲が一瞬のうちに晴れ、天気は快晴へ変わった。

―蝉の声がしない。

つい先ほどまで歩いていた街並みも微妙に違う。道だった場所は、家や木々で塞がれている。自分の家や学校はどうなっているのかな。


「あの、どなた様ですか?」

「どうして勝手に家に入ってるの?」


実の家族に追い出されて正直傷ついたが、僕は安堵した。

携帯が使える。これ程有難いと思ったことは無いと思う。

あの友人と連絡はつくだろうか。メールを返してもらうまでの数分間は、永遠にも感じられた。


この世界でも元気そうで何よりだ。

魔法が使える君か、僕は素晴らしいと思う。


「なあ…一つ聞きたいことがあるんだが」

「何だ?何でも言え」

「俺、生きて元の世界に帰れるのかなあ」

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