チャプター 8 *お墓 *ひっそりと冷たい *壺の中
それは個人がやっている小さな美術館で前から気になっていた。
散歩のたびにいつか入ってみたいと思わせる何かがあったけれど、ついつい入りそびれてしまっていた。
何があるのか、見たいけれど入ってはいけないよといつも誰かにひきとめられているような気がしてた。
それら誰も見てはくれないコレクションたちとある日、やっと対峙した。
だが惹かれるものは何一つなかった。保安用にカメラは設置してあるだろうけれど、盗まれてもいいようなものばかりを置いてあるだけなのだ。つまり税金対策で一般に公開しているわけだ。
でも、そんなガラクタの中で唯一墓の中を連想させるひっそりとして冷たい小さな藍色のその壺が印象に残った。
上からこっそりとその中を覗いてみた。
すると、声というか、さんざめきが聞こえてきた。
小さな人たちが見えた。
その人たちはお墓に住んでいた。お墓の通路みたいなところや隅っこに至るまでとにかく空いているところがないくらいみっしりと人で埋まっていた。
まるで暢気で陽気なお花見客みたいじゃないかと思った。
血湧き肉躍らせるのが生きている証しを得られる唯一の方法ではないらしい。
死んでみるのもまた一興ですかね、なんて思いながらいつまでいつまでも眺めていた。
やがて、気づいたら...
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