第65話勇気

「団長!!」


王子達と少し話をしていると、屋敷の中を調べていた騎士達が数名戻ってきて団長に駆け寄って何か耳打ちする。


その報告を聞くなり、眉間に皺を寄せて団長の顔が曇った。


「何かありましたか…」


ルーカスは騎士の顔になるとリナとアリスをセーラ様のそばにやって団長の元に向かった。


「いや、どんなに調べても変な物も改ざん書類もみつからないんだ…」


「何…あの動揺した様子なら絶対に何かあるはずだ」


するとその様子を見ていたバーンズが不敵に笑う。


「ふっふっふっ…その顔は何も見つからなかったんだな…そりゃそうだ!何も無いからな!だから言ったんだ!さぁ今すぐに解放してもらおうか?」


勝ち誇ったように笑うと手枷を取れと急に強気になる。


「くそ…すぐに見つかると思っていたが…」


すると隣でしゃがみこんでいたアリスが急に立ち上がって何か葛藤しているようだった。


「どうしたのアリスちゃん?」


「わたし…しってる」


アリスちゃんは手を握りしめ震わせながらじっと屋敷を見つめた。


その様子に私はアリスちゃんの手を掴んで握りしめる。


「よし、アリスちゃん!私がずっとそばについてる…絶対にもうその手を離さない、だから頑張ろう!」


アリスちゃんの震えはいつの間にか治まっていた。


「ルーカスさん、団長様!アリスちゃんが屋敷の事で何か知ってるようなんです!」


「ほ、本当かアリス!?」


「うん…なんか…きがえる、ときに…」


「おい!」


アリスちゃんが話そうとするとバーンズが大声を出して威嚇する。


「わかって言っているのか…」


ジロッとアリスちゃんを睨みつけた。


アリスはその絡みつくような視線にビクッと肩を震わせる。


「大丈夫だよ」


私はバーンズから隠す様にアリスを抱き上げた。


「おい…そいつを黙らせておけ!」


ルーカスが指示を出すとバーンズを押さえていた騎士がバーンズが喋れないように猿ぐつわをさせる。


「ではアリス嬢、案内を頼めるかな?」


団長が微笑むとアリスはこくりと頷いた。


アリスの指示に従ってバーンズを後から連れていきながら部屋へと向かった。


「ここ…」


アリスが指さすとルーカスがその部屋へと入る。


「この部屋も調べましたが何も…」


騎士達も部屋へと入ると壁などを叩きながら確認する。


「アリス、ここの何処かわかるか?」


ルーカスに言われるとアリスはリナから下ろしてもらい部屋に備え付けられた大きな姿鏡の前に立つ。


そして鏡に映る自分を指さした。


「ここに…はいるのみた」


「なるほど…鏡の裏に隠し部屋を作っていたのか、誰か中を確認するんだ!」


団長が指示を出すと騎士達が鏡を触って確認する。


「ここを…いじってた」


アリスが鏡の側面を覗き込んで指さす…すると何か引っ掛けるような留め金が付いていた。


騎士はそれを外すと扉のように鏡を開いた…そして中を覗き込むと…


「団長…女性や子供は外した方がいいかと…」


騎士達の顔は何を見たのか感情を押し殺して無表情となっていた。


「そうだな…アリス嬢、リナ、ありがとう。あとは任せなさい。誰かリナ達を外の王子達のそばの安全なところまで連れていくんだ」


リナはアリスをまた抱き上げると団長の指示に従いすぐに部屋を出ていった。

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