第61話ヒーロー

するとキッ!とバーンズを睨みつけて振り返るとその手を振り払った!


「リナ!」


アリスは大きな声でリナの名前を呼んだ!


「アリス…ちゃん…」


「アリスが喋った…」


リナとルーカスはアリスの喋る姿に唖然としていると…


バッ!


アリスはバーンズの手を振り払い真っ直ぐに駆け出してリナの胸に飛び込んだ!


「リナ、といたい。ルーカスがすき。あいつ…きらい…」


アリスはギュッとリナの服を掴んだ。


「アリスちゃん…私も…」


リナは優しく、優しく…アリスを包み込んだ。


「この…」


バーンズはアリスに叩かれた手をさすって二人を睨みつける…するとスっとその前にルーカスが立ち塞がった。


「わかっているのか?アリスは今は私の娘だぞ!」


「本人が嫌がっているんだ…なんかしたのか、あんた…もし何かしてるんなら絶対に許さないからな…」


「うるさい!それよりもそこの女!アリスを離せ!そんな汚い身なりで侯爵令嬢に触るんじゃない!おい、あいつを取り押さえろ!」


バーンズは矛先を変えてリナを睨みつけた。


「アリスちゃん、確かに私汚かったね。少し離れて…」


リナは抱きつくアリスを一度離そうとすると


「いやっ」


アリスはギュッとしがみつき離れる様子はなかった。


「この女が…!」


バーンズの従者や門番達がいっせいにルーカスやリナ達を取り押さえようとする。


無造作に伸びてくる手にリナは目を閉じてアリスを守るように背を向けた。


「リナ!」


ルーカスがリナ達を守ろうと近づこうとするが大人数に体を押さえつけられ身動きが取れない。


また俺は守れないのか…


ルーカスの伸ばした手が空を掴む…頭を押さえつけらて地面に顔を押し付けられた。


二人の姿が見えなくなると…


「私の娘に勝手に触らないで頂きたい!」


リナを掴もうと伸びた手をがっちりと掴むたくましい腕が見えた。


ルーカスが顔をあげるとそこには団長が怒りの形相で立っていた。


バーンズはブライアン団長の姿に顔を顰める。


「ブライアン…娘だと?その庶民がか?」


「口を慎めよ…今を持ってこの娘、リナは私の娘となった。その娘などと気安く呼ばないで頂きたい」


「そんなに早く手続きがすむか!?何かしただろ!」


「お前じゃあるまいし一緒にするな、ある方の口利きで早々にしていただけたんだ」


「ふん!それでも同じ侯爵家…立場は同じだ!」


「それはどうかな…アリス嬢による過剰な執着…今から屋敷を改めさせて貰う!何が出てくるか楽しみだな!」


団長がにやりと笑う。


「だ、誰の許可を得てそんな事を!?」


団長はバーンズに書状を見せる。


「アリス嬢を我がものにする為にロズワール伯爵の娘サフランから話を聞いただろ?」


「知らん…誰だそれは?そんな娘話した事もない!」


「それがこの娘は話した事があるらしいぞ…シモン!」


「はい!ほら来るんだ!」


シモンはサフランを縄で縛り引きずってきた。


「この!騙したな!騎士の癖に嘘をつくなんて恥を知れ!」


サフランは腕を紐で縛られながらも抵抗するようにキッとシモンを睨みつけた。

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