第38話ブライアン団長視点 続2
へたり込むサフランにブライアンは追い打ちをかけた。
座り込んだ足に潰れた料理をピッタリとくっ付けのだ。
「どうやらピッタリのようだね…これで踏んだのが君だと証明されたわけだ」
ニッコリと微笑むと…サフランがゾクリと震えた。
「ま、待ってください!私は子供には手をあげておりません!料理はたまたま…それに罰を与えたのはその従者の女です!ですから…どうかご慈悲を…」
サフランはブライアンの足にしがみついた。
「悪いけどお前が傷をつけたあの子はルーカスの婚約者だ」
「嘘…あんな子が…」
「あんな子だと…ルーカスの想い人だ。それに私達が娘のように可愛がっていてねぇ…そんな可愛い子を傷つけた罪、きっちりと償ってもらうぞ」
ブライアンは真っ青になる親子を睨みつけた。
「罪状は王宮に報告させてもらいまた改めて伝える…それまで自分のした事を深く反省するんだな」
ブライアンはサフランにそう吐き捨てる。
「ロズワール伯爵…あなたも覚悟をする事だ」
ブライアンが帰っていくと、ロズワールは娘を睨みつけた!
「お前はなんて事をしたんだ…侯爵家の娘に手を出すなど…」
「で、ですがお父様!あの子庶民の様な格好をしていたのよ!あの女がわざとそんな格好させてたのよ…」
「うるさい!お前はもう何もするな!部屋で大人しくしておれ!」
サフランはギリっと奥歯を噛み締めた。
「あの女…」
サフランの恨めしい声は父親には届かなかった…
✱
ブライアンはロズワール伯爵を訪れた足のままルーカスの家に向かい、事の経緯を二人に説明する事にした。
「って事があったんでルーカス悪いがリナさんと、とりあえず婚約してくれないか。リナさんもいいかな?」
「とりあえず?私とルーカスさんが婚約…?」
リナはわけがわからずに唖然としているとルーカスはニコニコと笑って手を握りしめた。
「それはいいですね!団長了解しました」
「団長様!そんな嘘をつかなくてもアリスちゃんの…いえ!アリス様の事を突き飛ばした罪を問えるのでは?」
「いや、あの場にいたのは君とアリスちゃんだけだ。そして肝心のあの子は…」
団長が悲しそうに顔を顰めた。
アリスちゃんが口を聞けない事を言っているのだろう。
「そうなると君の立場を上にする方が手っ取り早いからね。それに別に嘘にしなくてもいいんだよ」
ブライアン団長がニッコリと笑った。
「それもそうですね…」
ルーカスさんは団長の言葉に真剣な顔で頷ずいている。
「そんな訳にはいきません!」
リナの言葉にルーカスはガックリと肩を落とす。
「私のような者がルーカスさんと…立場が違いすぎます!」
ルーカスはムッと顔を顰めてリナの手を強く握りしめる。
するとリナは強く握られた手を見つめた。
「それなら俺の立場が庶民ならいいのか?リナがそれを望むなら騎士団を辞めてもいい」
ルーカスの言葉にリナは言葉を失う。
そこまでして…?っていや!そんな事したら本末転倒!
リナの気持ちを察したのかルーカスはリナの両手を掴んだ。
「言ったよな、俺は本気だって。俺にとって今までこの騎士団が一番大切で誇りだった…だがアリスを引き取って、リナが来て…俺の中で一番が変わってしまった。もちろん騎士団を辞めずにリナと一緒になりたいが、リナがそれを認めてくれないのなら…」
「ルーカスさん…」
「リナさん、ルーカスと暮らしてこいつがどんな奴か少なからずわかってるだろ?冗談でこんな事を言う奴ではない…」
リナは団長の言葉に頷いた。
ルーカスさんと暮らすようになり、彼の一途で真面目で素直な所が…自分も好ましく思っていた。
「それにもし立場を気にしているのならいい考えがある、リナさん私の娘にならないかい?」
団長はリナを見つめ微笑んだ。
「娘?団長様何を言っているのですか?」
「言葉の通りだよ、私の家に養子に来なさい。そうすれば立場なんて気にしなくていい」
「なんでそこまで…」
私の為に?それともルーカスさんやアリスちゃんの為?
「君達には幸せになってもらいたい…それにその子を幸せにしたいのならとってもいい案だと思うんだけどな…」
「「え?」」
二人が振り返ると少し開いた扉からこちらを覗き込むアリスちゃんの顔が見えた。
「アリス様…」
「君達が結婚して、アリスちゃんを養子に迎える。あの子の為にも本当の家族になるのもいいんじゃないかい?」
「アリス様、ルーカスさん…私でいいの?」
リナは駆け寄ってきたアリスを抱きしめて二人に問いかけた。
「私でではない。リナがいいんだ」
ルーカスはリナの両手を握りしめて熱い眼差しで見つめた。
「い…いあ…」
するとずっと声が出せなかったアリスちゃんが何か言おうと口を開いた!
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