第13話ルーカス視点

ルーカスはアリスをリナに任せると安心して家を出た。


二人は外まで自分を見送りに出てきてくれた。


角を曲がる時にチラッと後ろを見るとまだ二人は自分に手を振っていた。


なんか…いいもんだな…


行ってらっしゃいと言ってくれる人がいることがこんなにもむず痒いものだとは思わなかった。


俺は仕事場に着くと…


「あれ?ルーカス、お前休みを取ってたんじゃないのか?」


職場に顔を出した事で同僚達が首を傾げた。


「いや、家で人を雇ってな。だから明日から仕事に戻れそうだ」


「そうなんですか!それは助かります!」


後輩のラキがほっとした顔をした。


「団長はいるか?」


「はい、部屋にいると思いますよ」


俺は頷いて団長の部屋に向かうと…


「おい!人を雇ったって誰だよ」


同僚のシモンが肩を組んで聞いてきた。


「家政婦だ、アリスが懐いてくれている。これでどうにか家を空けられそうだ」


「家政婦か…お前の事だ、すごい金額で雇って騙されてるとかないのか?」


心配そうに聞いてくる。


「それが金額を言ったら多すぎると怒られた」


「は?多すぎると文句言ったのか?そいつ…」


「ああ」


俺が頷くとシモンは信じられないと目を見開いた。


「そいつ大丈夫か?まさかお前目当て…とかじゃないよな」


「大丈夫だと…思うが。ちゃんと部屋は別にしているぞ」


「鍵もかけとけよ…あと大事なものは金庫にしまっとけ!」


「わ、わかった…」


「あとは契約書をちゃんと作れよ!なにかあった時に訴えられない様にな」


「それを頼みにここに来たんだ」


「ならいいが…お前は剣術馬鹿で世間の事に疎いからな…アリスちゃんだっているんだちゃんとしろよ」


「そうだな…」


俺は頷いた。


あの家政婦のリナにもアリスの事で色々と怒られた…これからはもう少しアリスを気にしてやらないと…


「じゃあ団長の所に行くから、またな」


俺はシモンに声をかけると


「今度、どんな奴か見に…いや遊びに行くからな」


シモンの言葉に苦笑するとわかったと頷いた。



俺は団長の部屋に着くと扉をノックする。


「はいれ」


「失礼します」


声をかけて部屋に入る。


「ん?ルーカスか?お前姪っ子を引き取って休みを取ってたよな…どうしたんだ?」


団長が顔をあげてこちらを見てきた、なので家政婦を雇った事を伝えると…


「それで雇用に関する書類を頼みたくて…」


「わかった。知り合いの文官に頼んでおいてやる…しかし自分から賃金を下げるとは変わった人だな」


団長が笑っている。


「そうですね…今まで会った女性とはなにか違う気がします」


「そうか…まぁなにか困ったらすぐに言えよ。お前は時期、副団長を任せたいと思っているんだからな」


「いえ…俺ではまだ…」


その器ではないと思った。


「王子にも気に入られているんだ。これからも頼むぞ」


「まだまだ王宮騎士団長のようにはなれません」


「当たり前だろ、まだここの席はまだまだ渡すつもりはないぞ」


団長は笑っていた。



とりあえず明日から仕事に戻る旨を伝えて俺は一度家へと帰ることにした。


家が近づくと家の中から楽しげな笑い声がこぼれていた。


窓から漏れる明かりが家に人がいるのを教えてくれる。


誰かがいる家に帰ってくるのは久しぶりな気がした。


トントン…


自分の家なのにノックをしてしまう。


「はーい!どちら様ですか?」


すると中かはリナの声がした。


「俺だ…」


「え?ルーカスさん?なんで入らないんですか?」


リナが慌てて扉を開けてくれた。


「いや、何となく…」


入るのを戸惑っていると…


「ルーカスさんおかえりなさい!ちょうどご飯の用意が出来ましたよ」


「た、ただいま…」


迎えの挨拶に思わず照れる。


そして部屋を見て驚いた。


出た時も十分綺麗になっていたのにさらに荷物が片付けられて部屋が明るくなっている気がする。


そしてテーブルにはたくさんの食事が並んでいた。


「すみません、今日は始めてなので少し豪勢にしました…明日からはちゃんと切り詰めますので」


リナはすまなそうにコソッと耳打ちする。


「いや…全然構わない…」


美味そうな匂いにお腹が空いてきた…気がつけば今日は何も食べていなかったのだ。


「あと…なんか気が付きませんか?」


リナはチラチラとアリスの方を見ている。


俺はそっちをむくと…


「あれ?服が…」


アリスの服が変わっていてなんだかスッキリとしていた。


「可愛いな!」


なんか前の服よりも似合ってる気がする。何が変わったのかわからないのが


「よかったね~アリスちゃん」


リナの方が嬉しそうにアリスを見ていた。


アリスも恥ずかしかったのか頬を赤く染めている。


この家に来て全然笑わなくなっていたアリスが前の様に笑ってる姿にほっとした。


「じゃあ早速食べてください」


リナの言葉に俺はまってましたと頷いた。


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