ハリス、幼女を拾う
プロローグ
ドサッと言う音で、ハリスは目を覚ました。
時計等という高尚な物品など無いので時刻は分からないが、月がとても明るく天変より大分傾いていた。
月明かりを頼りに自分の部屋を探るが何かが動いたような印象はない。
いつもはそれで気にせず再び寝に入るところだが、今回は何かの虫の知らせか、ハリスは次第に居ても経っても居られないほど気になり始めベッドから抜け出すことにした。
蒸気機関が発明されて次第に王都の空気は悪くなってきているが、魔法、取り分け結界の発達により家の中は快適で美味しい空気が吸える。
そんな訳で取り敢えず家の中をくまなく探してみるが音の出所は無く、仕方なしに機械が動いて無くとも霞む外に意識を向ける。
すると、地面が小さく盛り上がっていた。
何かが倒れているらしく、それを見た瞬間に焦りを覚えた。
これ、自分の感情か?
冷めたようにそう問いかけながらも、体は感情に従ってそれの近くへ向かい、それを抱き上げる。
それは幼児だった。見かけはやせ細りとても小さい。
その事から三、四歳くらいの大きさだが年齢はもう少し上だと感じ、家の中へとって返す。その時には既に焦りなど感じず、何をすべきかを冷静に考えられるようになっていたと後になって思い出したハリスは何かに導かれていたと感じたのだそうな。
そんな話をタツヤにすると、
「ひぇぇ、おっかねぇ。とずまりすとこ」
とおどけたように自らの体を抱きしめて大仰に震えて見せた。こういった先進的なユーモアは見ていて楽しいと感じ、仲間同士で笑い合うのだった。
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