四十九話 元々

 俺たちは冒険者ギルドから、ホームまで帰ってきていた。

 少し遅くなってしまった夕食を、みんなで囲いながら今日の出来事を話している。

 デザート・ワームとの戦闘や、サピエルと小競り合いをした事だ。


「それにしてもサピエルさんって、元々はシンさんのパーティのリーダーだったんですよね?」

「ああ、そうだ」

「いつもあんなに怒っている感じだったんですか?」

「そんな事はない。昔はお互いにライバルって感じに思っていた……と思う、少なくとも俺はな」

「それなのにあんなに睨んで……怒鳴ってくるなんて」


 リリアは自分の事のように悲しんでくれているようだ。

 その姿に少し励まされたような気がした。

 だからついつい、昔話しを始めてしまった。


「俺たちがまだ小さかった頃の話しなんだがあいつの、サピエルの親父さんが高難度クエストで亡くなってしまってな」

「そんな……」

「親父さんがパーティリーダーだったから、そのまま解散になったんだ。それでサピエルが新しくパーティを立ち上げるために俺たちでメンバーを集める事になってな」

「みんな残ってくれなかったんですか? 酷いです……」

「そうだな……でも冒険者なんてそんなもんさ。だから俺たちは採集クエストとか低ランクモンスターを倒したりしていたよ」

「子供が二人きりでですか、大変、でしたよね……」

「戦力での苦労はあったが、俺はレオニスのところによく厄介になっていたからな。金銭的には言うほどだったかな」


 俺はレオニスのところ、サピエルは親父さんの遺したパーティホームで生活をしていた。

 サポーターしか出来ない俺の分の稼ぎは、ほとんどサピエルに渡していた。

 なのでサピエルも飯は食えていたと思う。


「でもそんな関係なら、なにか恨まれるような事でもしたの?」


 リリアの隣に座っていたラプスウェルが質問してきた。

 俺には全く心当たりがなかったので、正直に伝える。


「それが分からなくてな。ある日突然、サピエルが俺と距離を置き始めた」

「聞いたりしなかったの?」

「そりゃあ聞いたさ、でもお前には関係ないの一点張りだ」

「それじゃあなにも分からないわね」


 そうなのだ。

 おそらくサピエルの中でなにかがあって、俺と距離を置こうとした。

 だが洗濯や掃除、ホームの管理などは俺がやっていた。

 なのでパーティから追い出されるまではなかったのだと思う。

 ……最終的には追い出されてしまった訳だけどな。

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