四十五話 その後

 俺たちは街に帰ってくると、冒険者ギルドに報告を済ませてからホームに帰ろうとしていた。


 だがギルドの扉の前まで行くと、どうやら中で揉めているようだ。


 おそらくウルフの時の俺たちと同じように、クエスト中にイレギュラーが発生したのだろう。


 こういった処理はレオニスも本当に大変そうだ。




「二十匹は軽く越えていたぞ!」




 俺は騒がしい声を聞き流しながら、ギルドの中に足を踏み入れる。


 とりあえず周りのやつか誰かに聞けば、何が起きたかはすぐに分かるだろう。




「なにやら騒がしいな、なにかあったのか?」




 俺の一足先にギルド内へと入っていたルクシアが、騒ぎの中心人物に指を向けた。


 指の先にはなんだか見覚えのある、金色の髪をした男がいた。


 それは受付カウンターで、受付嬢に抗議をしているサピエルの姿だった。


 その姿に驚いてしまった俺は、確認しようとつい声を掛けてしまった。




 俺の声に反応したサピエルは、やっと俺の事を認識したようだ。


 そして今すぐにでも襲い掛かってきそうな顔で睨んできた。




「シン……!!」


「久し振りだな」




 俺は本当にそう思ってサピエルと話す事にした。


 いつも周りにいたグングとクルトがいないようだが、とりあえず状況を確認する。




「サピエル、声が外にまで聞こえていたぞ。なにかあったのか」


「うるさいっ! お前には関係ないだろう!」


「確かにパーティを抜けた俺には関係のない話しかもしれない。だが、生憎俺たちもクエストの報告をしたくてな」


「ハッ! どうせ大したクエストでもない癖に!」




 サピエルはそう言って笑う。


 だが俺からしたら、緊急クエストでもないクエストならどれも優先度は変わらないけどな。


 まぁSランクパーティからしたら『大したクエスト』でないのは、その通りかもしれない。


 とにかくサピエルが場所を空けてくれたので、受付嬢にクエストの報告をする。




「これの確認を頼む。クエスト内容は『デザート・ワームの討伐』だ」


「……デザート・ワームだと!」




 俺が紙を渡そうとすると、サピエルが急に声を荒げる。


 彼に腕を掴まれ、受付嬢に渡す前にクエストの内容を確認される。




「別のクエストか……」


「Sランクのクエストだと思ったか? だったら俺たちじゃあまだ無理だ」


「はん! 当たり前だ! どうせこの一匹すら倒すのがやっとだったんだろう!」


「いちいちうるさいわね! あたしが半分に斬り落としてやったわよ!」




 俺がサピエルに突っかかられていると、後ろからラプスウェルが割って入ってきた。


 彼女に対して、不快といった感情そのままにサピエルは聞いてきた。




「なんだお前は」


「あたしはラプスウェル。シンとパーティを組んでいるわ、この子たちも一緒にね」




 ラプスウェルがそういうと、俺の後ろにはみんなが並んでいた。

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