十七話 ここから始まる
俺が椅子に座ったままで待っていると、ばたばたと慌てた様子でみんなが集まってきた。
五分という時間制限を守ろうとしているのが伝わってくる。
まず最初に、俊敏さが一番高いと思われるルクシアが戻ってきた。
武器も取り回しのしやすそうな短剣を持っている。
防具も俺と同じように、機能性や動きやすさを重視したような軽装だ。
更に所持インベントリの中身を見てみる……が。
本当に準備してきたのか?そう疑いそうになるほどアイテムの量が少なかった。
次は意外にもラプスウェルが戻ってくる。
肩と背中が見えている黒いドレスの様な服で、前からは膝の上が見えるくらいにはスカートが短い。
どう見ても物理への耐性は低そうに見えた。
そして武器は……何も持っていないな。
俺は「武器はどうした?」と聞きながら同じようにインベントリを確認していく。
流石にルクシアよりはしっかりと揃っていた。
話しを聞くと彼女の武器は、自分の身長と同じくらいの大きな長剣らしい。
どちらかと言えば大きめなサイズの胸を張りながら「あたしすっごく強いんだから!」と言っていた。
スカートの上部から見えている尻尾の動きが、少しぎこちなく見えたが本当に大丈夫なのだろうか。
そしてラプスウェルと話している間に、イリスも集まってきていた。
イリスは最初に見た時から、何一つ変わっていない服のままだった。
しかも彼女も武器らしき物は持っていない。
ヒト族や他の種族が魔法を使う時は、杖の一つでも持つのが当たり前だ。
杖を使う事で消費
だが全種族で魔法力も随一の神族なら、そんな補助程度の武器は関係ないという事だろうか。
そして最後に来たのがリリアだ。
エルフ族も俊敏さは高い筈だが、イリスよりも遅いとは一体どうしたのだろうか。
リリアの装備は昨日見たのと同じ、緑色のワンピースと弓を背中に装備している。
ワンピースに付けている防具は本当に最低限。
というか、下手をすればルクシアより少ないように見える。
二人の違うところと言えば、頭に宝石の付いた飾りや、腕輪があるかどうかだ。
あれらに防御や耐性を上げる効果でも付与されているのだろうか。
「リリアは少し時間が掛かったな、どうかしたのか?」
「えっと、その、装備が……少し悩んでしまって。すいません!」
リリアは俺の顔をチラチラと見ると、申し訳なさそうに頭を下げてきた。
その様子にイリスが「あらあら」なんて言いながら俺の顔を見て笑っていた。
確かに、どんなクエストを受けるとは決めてなかったからな。
「いや、最初から受けるクエストを決めてなかったからな。悩むのもしょうがない」
「……はい」
「あらあら、気を落とさないようにね」
少し落ち込んだような顔をしたリリア。
それを見たイリスは、リリアの手を取って励ましていた。
こう見ているとチームワークが悪いなんて信じられないな。
「じゃあ準備が出来たなら早速行こうか。少し準備不足だったとしても、俺もいるから大丈夫だろう」
「ギルド、みんなでいく」
そう言ったルクシアは、俺の手を引いてホームの外へと駆け出した。
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