僕のストーカーはクラスの美少女だった。

星海ほたる

第一部  ストーカーと同際

第1話  ストーカーと僕

 高校1年生の僕、天野栄汰あまのえいたは入学と同時に一人暮らしを始めた。

 祖父は加工食品を扱っている大企業の社長でお金持ち。


 入学祝いに新築の家をくれたすごい人。そしてとても変な人だ。

 今はその家のキッチンで朝ごはんを作ったり、学校へ行く準備をしたりしている。


 朝ごはんと言ってもパンの上にハムとチーズをのせケチャップをかけて焼いただけのもの。


 僕は祖父とは違い値段や価値にあまりこだわりがないのでいつも買い物は近所のスーパーでするし、どちらかと言うとお買い得商品やセール品を買っている。






 外に出て朝いつも家の前を通るおじいさんに挨拶をする。

 それから少し歩いたところにある近所の本屋、氷川書店ひかわしょてんに入ってラノベを買った。


 氷川書店は小さい頃母さんとよく来た本屋。

 最近では学校の帰りに立ち寄ってラノベや漫画をよく買っている。

 僕にとってラノベは唯一の趣味であり楽しみみたいなものだから。


 それから店を出て少し離れた所でいつもの違和感にきずく。


「はぁ。またか……」


 後ろから誰かに着けられてる。

 入学して少し経ってから毎日着けられているんだけど。

 そろそろしつこいので捕まえて交番に突き出してやろうかとか思っている。


「バッ!」


 ふりかえってみても近くには横断歩道をゆっくりと渡る高齢の人や犬と散歩する若い女の人だけで怪しい人物は見当たらない。


 前を向いてまた歩き出すんだけど、やはりまだ気配を感じるのでまた振り返ってみる。


「バッ!」


 振り向いた瞬間、曲がり角にある一本の木に誰かが隠れたのが見えた。

 僕は、恐る恐る木の方に近づいた。


 戦闘態勢を整え木の後ろを覗いた瞬間


「ごめんなさいっ!」


 僕は、目を全開にし、驚いた。


 僕のストーカーは、同じクラスの超絶美少女で男子からモテモテの

 桐花結夏きりはなゆいかだったのだ。

 少し身体が固まった後、僕は桐花結夏にたずねた。


「なんで僕のストーカーなんかしてるんだ」

「え、誰が?」

「君が!」

「え!? 私がストーカー?」


 全然自覚がないので諦めて着けていた理由を聞く。


「で、なんで僕を毎日朝から着け回すんだ」

「なんでって……」


 なぜか桐花結夏は顔を赤くしてもぞもぞしている。

 そして彼女は覚悟を決めたような様子で言った。


「好きなの、君が好きなの!」

「へぇっ!?」


 予想もしなかったとてつもない展開に僕の脳がフリーズする。


「あのね。男子をからかうのは良くないよ!」

「からかってなんかない」

「まぁ、もう僕を着けないでくれ」

「うーん……」


 実は今、僕はとっても気分がいい。

 着けられるのは嫌だが、人生で初めて告白されたのだ。クラスの人気No.1美少女に。

 僕はストーカーが変なBLなおっさんじゃなくて良かったと思った。








 学校での桐花結夏は、朝会った時と雰囲気が違った。

 クールなお嬢様って感じのオーラ。


 すると桐花と目が合い席を立ってこっちに近づいてくる。

 そして桐花は教室の外を指差した。


 外に出ろということだろう。僕は桐花に着いて行き美術室の中に入る。

 誰もいない静かな部屋で彼女から口を開く。


「ねえ、私があなたの事を好きなのは秘密にしておいて。お願い」

「あぁ、わかった」

「割りとあっさりなんだね」

「まぁ言っても何も得しないしな」

「そう……」


 その後、僕らは美術室から出て教室に戻った。








「なぁ栄汰ぁ、桐花さんと美術室でなにしてたんだよぉ〜」

「ッ!? 森山、突然耳元で囁くな!」

「栄汰くんはいっつもいい反応してくださいますねぇ〜」

「うるさい、席にもどれ」


 こいつは中学の時からずっと同じクラスで仲のいい森山隆平もりやまりゅうへい


 僕と同じアニメ好きで二次元好きな非リア男子だ。

 隆平は割りとイケメンなんだがバカで変態なので女子からもモテない。


「なぁ、桐花さん可愛いよな〜。肌も白くてモデルみてぇ」

「そーか? でも伊藤まみちゃんの方が100倍可愛いけどな」

「それ二次元じゃねーかぁ。まぁ、お前は一生DTで生きてろ」

「そーさせてもらうよ」


 別に三次元の女子に全く興味がないわけでもない。

 中学二年生の時クラスに好きな女の子がいて、僕はその子と毎日登下校し夏祭りにも誘われた。しかも二人で。


 そんなイベントもあって僕は彼女と好き同士であると確信し次の日の放課後、教室に呼び出して告白した。


「ぼ、僕と付き合ってください!」

「ごめんなさい。私付き合ってる人がいるんだ」

「え? そうなんだ……」


 絶対に成功すると思ってた。

 まさか彼氏がいるなんて知らなかった。

 じゃぁなんで、なんで夏祭りなんかに誘ったり一緒に帰ったりするんだよとも思った。


 僕はその頃から女子に興味がもてなくなり少しの間家にひきこもったりもした。

 たまに隆平が家に来てくれたりしたおかげで少しずつ気持ちも回復した。

 三週間もすれば学校にも行けるようになっていてあの子のことを気にすることもなくなっていった。それでも女子と話すのは以前より苦手になっていた。


 高校生になって一人暮らしをすることになり、その頃には女子嫌いもなくなっていた。


 多分幼馴染の七海陽葵ななうみひまりがよく話しかけてきてくれたおかげだ。


 幼い頃から家が近く陽葵の親は仕事で帰って来るのが遅かったので僕の家でよく晩ごはんを食べていた。なので隆平より付き合いは長い。


 今僕がこうして学校に行けているのは二人のおかげだと思う。





 帰り道、僕の横にはなぜか超絶美少女が並んで歩いていた。


「なぁ、僕たちなんで一緒に帰ってるんだ?」

「だめ?」


 こんな可愛い女子に『だめ?』なんか言われたら誰だって断れない。


「ダメじゃないけど、桐花さんがマズいだろ」

「この辺は人少ないからいいの」


 流石毎日僕をストーキングしてるだけある。


「ねぇ栄汰。私のことは結夏って呼んでくれない?」

「でもなれなれしくないか?」

「そんな事ないでしょ」


 女子の気持ちは僕にはまだまだわからない。


「ためしに結夏って呼んでみてよ」

「結夏」


 自分で言えって言ったくせに赤面する結夏。


「なあなあ。もう僕の家着いたんだけど」

「それが?」

「いや帰れよ」

「帰らないけど。今日から私もここに住むから」


 はい?!










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