(2)女子トークに中年を添えて
「仕事熱心なのはいいけど、学園都市に戻って来てすぐに働くなんて無理をしてないかしら?」
「いえっ今まで放っておいた仕事をこれ以上放置してる方が気掛かりですから……」
「ふうっ貴女は昔からそうよね……」
フォリアは嘆息する、しかしイオリアが依然と何も変わっていない事が知れて内心は安堵していた。
(イオリアが魔法や何かの薬品で操られてるなんてのは考えられないわ。魔力にもよどみはないし会話も正常、表情にも不自然な点はない…)
会議にてイオリアについても割と言われていたので話をするついでにとフォリアはイオリアの様子を見てみたのだ。
結果としてイオリアに何か変わった所はない様に見えた。
(イオリアが問題ないのなら、後はその魔法使い、アオノと言う者について聞いてみましょうか)
「イオリア、仕事をしてる余裕があるの?二日後には学園都市の実技試験をするのよ?」
「ええっそうですね」
「なら早くその事を例のアオノと言う魔法使いに知らせてあげて、今後の対策とかを……」
「ああっそれはですね………」
「?」
イオリアはアオノのことを考えた。魔法の実技試験、本来ならその難易度の高さを知る者としてフォリアが言うように何かしら手を打つべきではある事を理解はしてる彼女だ。しかし……。
「私から魔法に関して彼に何か言える立場ではありませんよ、それに事魔法に関してアオノさんが何かを失敗をするなんて想像出来ません。彼が魔法を披露すれば直ぐに結果は出る事になるでしょう」
「………そう」
(随分とその男を高く買ってるのねイオリア、それとも共に旅をしたと言う話も聞くし、余程の実力を持つと確信しているのかしら?)
「イオリアがそこまで言うなんて、今まで1度もなかった事だわ」
「フフッ単純に以前の学園都市にいた私は自分が魔法使いとして一流に近い所にいると
「あら?その魔法使いに魔法で
(イオリアを魔法で脅した?まさか魔法で痛めつけられたとかじゃないわよね?もしそうなら学園都市の教師の殆どと生徒の多くを敵に回す事になるわよ?アオノ…)
イオリアは美人エルフの教師として学園でも人気者だ、この世界では女性に暴力を振るう男は最低で魔法で傷つける男は最悪だと見なされる。
そもそも魔法も暴力も何の罪もない者に使えば犯罪だというのがこの世界の常識だ。
「ちっ違いますよ!ただ、1度だけ手合わせをしました……」
「そうっならその時にその魔法使いの実力が?」
「いえっあの時は私がアオノさんを魔法で瞬殺してしまいましたね」
「………………ハァッ!?」
(何それ、その男負けたの?じゃあなんでイオリアはその男を評価してるのよ?)
フォリアが知るイオリアとは、正に実力と出した結果で相手を見極めるタイプの典型的なエルフだ。
エルフはその大半が見た目が優れているので個人の優劣を保有する魔力の量だったり魔法の腕だったりで判断する。
典型的なエルフだったイオリアが、自身が負かした相手にここまで態度を軟化させる事が信じられないフォリアだった。
フォリアのコイツ何を言ってんの?的な視線を受けるイオリア、この辺りの話は長くなるので結果だけを端的に話す事にしと。
「私は1度アオノさんと戦いました、けどアオノさんは理由もなく相手に魔法を使う事が嫌いな方だったから、本気で勝負するつもりはなかったんです」
「一応でも手合わせならそんなことを気にする理由はないんじゃないの?」
「いえっ彼の魔法使いの実力なら、正直私なんて一瞬で倒せました。それをしなかった理由は彼自身がその魔法の力を一方的な力の誇示に使うと言う事を好まなかったからです」
「………だからって戦って負けてもいいと考えるの?その男は」
実力のある魔法使いは相応にプライドも高い、イオリアが認める程の魔法使いならとフォリアも考える、しかしイオリアは言う。
「彼にとって実力を示す為に戦うと言うこと自体があまり興味がないんですよ、必要な時に必要とされる魔法の力で一人でも多くの人々を守る。彼が重きを置くのはそれだけ、そう言う魔法使いなんです」
(………すっすこし持ち上げすぎたかも知れませんか?アオノさんって実は女の人に弱い所が少し……いえっかなりあるんですよね)
「……………」
(そんなの物語に出て来る英雄や勇者じゃないの、何を言ってんだか……)
イオリアの発言に内心呆れてるフォリアだ。
(けどっもしも本当にそんな大層な魔法使いだとするのならイオリアが此処まで落ち着いてる理由にもなるけど……)
もちろん青野と言う人間はそんな聖人君子ではない、自身の煩悩の為にも普通に魔法を使う。魔法で女のお風呂を覗く様なタイプではないというだけの話だ。覗きたいとは思うだろうが……。
自分を格好良く演出するためなら魔法もバンバン使う、それがたまたま多くの人々を助ける結果になっただけだと本人は言うだろう。
完全にお人好しと言う理由だけで動く事も多々あるのだがその辺りはあまり意識してないのが中年魔法使いなのである。
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