質屋の仕事

 今の朝ドラに質屋のおじさんが出てきます。主人公の家では質屋をしょっちゅう利用していて、その妻もおじさんと仲良しで、最後には妻の大事な大事な物を「おじさんに貸すだけだから流さないでほしい」そうお願いしてお金を借りるぐらい親しい人になってます。


 私は質屋さんは利用したことがないんですが、子供の頃にもドラマの中で、どうしてだったか女子高生が担任の先生に付いて行ったら質屋さんに入るところだった、のを見たことがあります。


 江戸時代の庶民には、質屋さんというのはとても馴染みのあるお商売で、例えば夏になったら布団を質屋さんに預けて質札をもらい、冬には受けだして使う、なんて倉庫代わりにもしていたと読んだこともあります。もちろん、お金を払えなかったら「流される」、つまり他の人に売ってしまうわけですが、そういう時には利子だけ払って流さないようにしてもらっていたとか。朝ドラの質屋のおじさんみたいに、馴染みになるとそういうちょっとしたお願いなら、聞いてもらえたりもしてたんでしょうね。「もうちょっと待って」みたいな。


 私の活動範囲にも実は質屋さんがあります。何年ぐらい前にできたのか覚えてませんが、ある時3階建てかなあ、黒い格子みたいな飾りのついたビルができました。1階の入り口の横にガラスのショーケースがあって、そこにブランドバッグが飾ってあります。そして「質」と書いた看板が出ているので、ああ質屋さんができたんだなと思って見ました。車で横を通るだけなので、細かく見たことはないですが、なんとなくその建物がイメージの質屋さんぽくて、なかなかシャレたビルを建てたなと思ったのを覚えています。


 ですが、今、質屋さんをそんな風に使っている人っているんでしょうか? 今朝もテレビで「質流れ品のセール」を紹介してたんですが、大抵の人がブランドバッグなんかを売る目的で持ち込んで、それを査定した質屋さんが買い取り、買いに来た人にそれなりのお値段で提供する、それが今の質屋さんの形になっている気がします。


 もしも、私が例えば使っていないストーブとかを持って行って「冬には出しにきます」と言ってもお金、貸してくれるのかなあ。今の質屋さんってブランド物とか金製品とかを「買い取る」イメージしかありません。きっと、バッグ持って行った人も「質札」なんてもらって帰ってませんよね。


 それってもう「質屋」じゃなくて「リサイクルショップ」だと思うんですが、それでもデパートで開催されているのは「質流れ品セール」だそうで、テレビで見た人はブランドバッグをいくつかまとめて数十万円で買った、とか言ってました。


 なんだろう、なんか思ってるのとちがーう!

 質屋さんの仕事と思ってるのとちがーう!


 それでもやっぱり、今でもそういうお店が「質屋さん」なのが、なんとなく不思議です。

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