二人称の小説

 さて、「三人称の小説」「一人称の小説」と続いて書いてきたら、ふと、気になってきたのが、


 「二人称の小説」


 です。


 そもそもあるのか?

 そう思って調べたんですが、ありますね、あるんです、ええ。


 ただ、「完全に二人称か」と言われると、ちょっとどうかなって感じのようです。


 それで私なりに勝手に考えてみました。


 たとえばこんな文章があったとします。




「俺が愛してるのはおまえだけだよ」


 太郎は花子にそう言った。


「ええ、信じているわ」


 花子はそう答えたが、太郎には自分以外に10人の恋人がいるのを知っている。




 これは「三人称」です。

 「花子」でも「太郎」でもない第三者が見たことを語っている形。


 では「一人称」にしてみます。




「俺が愛してるのはおまえだけだよ」

 

 太郎は私にそう言ったわ。


「ええ、信じているわ」


 私はそう答えたけど、でも知っているの、太郎には私以外に10人の恋人がいることを。




 こんな感じですか?


 「花子」が主体で「太郎」について語っています。

 「三人称」よりも感情が混じっている印象です。


 で、いよいよ「二人称」っぽくしてみます。




「俺が愛してるのはおまえだけだよ」


 あなたは私にそう言った。


「ええ、信じているわ」


 私がそう答えたのをあなたは信じているのかしら? あなたに私以外に10人の恋人がいることを知っている私の答えを。


 

 「私」が「あなた」の気持ちになって、「あなた」の代弁をしてる形になりますか。

 これが正しいかどうか分かりませんが、あくまで私のイメージでアレンジしてみました。


 かなーり、「あなた」に感情移入して、主体に持っていかないと難しいですね。

 それに、完全に「あなた」のセリフや動きだけで構成するのはやっぱり無理かも。


 それと、この場合の「あなた」を簡単に「あなたという名の三人称」に変換できます。

 上に書いた「一人称」の文の「三人称の太郎」の部分を「二人称のあなた」に入れ替えても何も違和感がありません。だって「太郎」=「あなた」ですし。




「俺が愛してるのはおまえだけだよ」

 

 あなたは私にそう言ったわ。


「ええ、信じているわ」


 私はそう答えたけど、でも知っているの、あなたには私以外に10人の恋人がいることを。




 ほら、なーんにも違和感がない。


 なので、苦労して「二人称」にするよりも、「一人称」にしてしまう方が書きやすいし、読む方も楽だろうと思います。


 ということで良い「二人称の小説」というものもあるらしいのですが、少なくとも私は意識してそれを読んだことはありません。


 いや、色々と面白かったです。

 他に「人称が混在している小説」というのもありますが、そこまで突き詰めると本当にキリがなくなるので、ここまでで!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る