不可思議状態アプリメント
バブみ道日丿宮組
お題:難しい死 制限時間:15分
不可思議状態アプリメント
『あなたにとって楽園はどこなの? 私にとっては世界が全てなの』
付き合って3日後に死んだ彼女は妙な手紙をオレに残してた。
ちなみにこう書くとオレが殺したかのように思われるから書いておくけど、無実だ。彼女があられもない姿(全裸)で発見された時、オレは教授に研究室で缶詰状態にされてた。力がなさそうなアリバイだけど、それでもアリバイには違いない。
彼女は生きてるか死んでるかわからない状態で道路脇に転がってたのを発見された。
交通事故にでもあったのかと警察は調べてるがどこにも負傷はない。全裸ということもあってそういう行為があったのではないかという疑いもあったが事実は発見できなかった。
彼女の心臓は動いてるし、脳も生きてる。
彼女は一種の植物人間ともいえるらしいけど、なぜか血が巡ってないらしい。それで死んでるか生きてるかわからないということ。皮膚年齢は日に日に若返ってる話も聞く。血が流れてないのにどうしてだと医者たちは頭を抱えた。
親御さんも死んでるわけでもないのでどうしようと何度もオレに相談してきた。彼女とは家族ぐるみの付き合いをしてたからね。
そんな傷ついたオレたちをマスコミは何度も取材にやってきた。どうやら不思議な状態が面白いらしい。
『彼女とはどういった関係でーー』
『数日前に喧嘩したという話がーー』
『交際が始まったのは大学に入ってからとーー』
『事故にあったと聞いてどう思いましたかーー』
『彼女を見たときの感想はーー』
ねぇねぇ今どんな気持ちをまさか自分自身が受けるとは思ってなかった。
どうしてマスコミというのは静かにしてくれないのだろうか。自分の身内が同じようにあったら同じことをするのだろうか。おそらくしないだろう。彼らはそういう人種だ。金のために動く。不純な仕事。オレには真似できない。
「……試験合格したんだ」
寝息をたててる彼女に言葉をかける。夢の中で聞いてるのかはわからない。もはやこうしてるのも愛があったからなのか同情なのかよくわからない。
気がついたときにはこうして彼女に最近起こった出来事を話してる。
いつか目が覚めたら答えてくれる……そんな甘い考えもしてた。
彼女はこれから死ぬのか、生きるのか。
それは医者でも、親でも、オレにもわからない。
ここにいるのは本当に彼女なのかと疑うこともしたけど、肌のぬくもりは彼女のもの。だから……なんともいえないまま過ごすほかならない。
不可思議状態アプリメント バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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