牢獄の会話

バブみ道日丿宮組

お題:安全な許し 制限時間:15分

牢獄の会話

「お前はいいよな……外に出れて」

「牢屋の外に出たとしても、その先がないのだから大した違いじゃない」

「そんなことはないぞ。狭い場所より、広い場所だ。なにより、看守の指図を受けなくていいのがいい」

「そうか? 看守は看守のままだと思うがな」

「お前は仲がいいからそう思うんだ。実際看守に殺意を持ってるやつは数多く入る。お前はチヤホヤされてると前に言ったよな」

「あぁ、そんな話もあったな」

「そう。看守と仲良くしたから牢屋から出れた。仲間たちはそんな話をよくしてる」

「それで会話してるところよく見るようになったのか」

「そうだ。だが、外に出れたやつはいない。むしろ、牢屋から出る時間が減ったやつもいるくらいだ」

「不思議な話だな」

「不思議なことじゃない。オレたちが思ってることは歪んでる。歪んでたから事件を起こした。そんなやつらが心情を語ってみろよ、罪深いことしかない」

「そんなことはないと思うがな。事件を起こしたって人間そのものを壊してるわけじゃない。人の心を持ってる」

「よくそんなことが言えるものだな。こないだ痴漢冤罪で捕まったやつが処刑されたばかりだろう」

「あれは冤罪じゃなかったじゃないか? あまりそいつとは話してなかったが」

「オレはよく話したぞ。両手は上にあげてたし、扉に全面をくっつけてたって」

「それで死刑か」

「あぁ、ひどいものだろう。オレの刑期4000年と比べたら悲しいものだ」

「悲しんだところで死んだやつは帰ってこない」

「わかってる。だがわかっただろう? ここに慈悲はないのだと」

「救いがないか……。救いを求めるくらいなら事件を起こす必要もないんだがね」

「喧嘩売ってんのかおまえ!」

「別にそんなことはないぞ。そういえば言ってなかったな」

「なにをだ!」

「僕は事件を起こしてないし、罪を課せられたわけでもない」

「じゃ、じゃぁなんでいるんだよ! オレと半年も同室だったじゃねーか」

「教育だよ。裕福な生活をするよりも一番地獄で心を学ぶ……だったかな」

「なんだよそれ! じゃぁ最初っからおまえはここに入る理由はなかったっていうのか!」

「あるかないかでいえばないだね。ここにきたのは国を支配する方法を学べという父の考えでね。なにをいってるのかわからなかったけど、たくさん学べたような気はするな。喧嘩とか?」

「……ふざけてるな」

「そう……牢屋から出ても結局は父の支配からは逃げられない」

「おまえは父の罪なのか?」

「さぁどうだかね。あの人は何を考えてるかわからないし」

「そうか……じゃぁいけよ」

「ん? 行くとこなんてないさ。ここの牢獄じゃあんたの近くが僕の居場所だったんでね。迎えがくるまでもここにいるよ」

「勝手にしろ」

「あぁするする。へへへ」

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牢獄の会話 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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