田舎から都会への飛翔

バブみ道日丿宮組

お題:秋の村 制限時間:15分

田舎から都会への飛翔

 人が村の外へと出始めてから学校では学級崩壊よろしくな人数しかいなくなった。

 小中高まとめて2クラス。

 教師は5人とそこそこだけど、2クラスしかないので暇な時間を利用して、都会への就職口を探してるようだ。

「結婚したい」

 授業中にぽつりと語るのは先生の1人。

 今年入った新しい先生だ。

「先生結婚したいならどうしてこの村にきたの?」

 生徒の一人が言葉を漏らす。

「そうね。村のほうが限定されて出会いが生まれる……なんてことを考えてたのよね」

「残ってるのは既婚者ばかりですからね!」

「そうなのよね……リサーチ不足だったかしら」

 ため息がこぼれた。

 村に残った人は老後の静かな暮らしをの望んだ既婚者、老人ばかり。先生が狙うような若い青年はほとんどいない。メインとなるのは高校生ぐらいじゃないだろうか。

「先生街に戻ったりしないよね?」

 小学校の低学年生が寂しそうに問う。

「いなくならないという断言はできないけど、しばらくはここにいるつもり。受け持った仕事だもの、途中で投げ出すのはプライドが許さないわ」

「そういっても授業が進んでないじゃないですか」

 まとめ役の高校生が口を挟んだ。

「そうね。小中高まとめてやるなら授業に重さを乗せないやり方がいいと思って。試験問題でわからなかったら手をあげて挙手してね」

 その一言で全員が答案用紙に目を向けた。

 僕はといえば、違う科目の用紙を進めてる。しかも2学年上の問題。

 頭の作りが他と違うらしく、僕はいつも大学の問題集を渡されてる。授業の声は気にならないし、黒板に書かれた内容はどれも知ってることだったので見なくても良かった。

 

 そんな僕に秋ーー唐突に国から手紙がきた。


 内容は名門中学への推薦状だった。しかも国からの指名。

 親は大変喜んだ。引っ越しの準備も早々に始めるくらいだった。

 僕の意見は知らないことが知れる都会のほうが良かったので口を挟まなかった。学校の友だちは別れを惜しんだ。

 最後の登校日にはお別れ会をしてもらった。

 低学年生に泣かれたのは寂しさで溢れた。

 永遠の別れではないけど、しばらくは村に帰ってくることはないだろう。

 仲の良い友だちはSNSでの連絡ができる。

 これにより引越し先で寂しいという思いにはならないだろう。

 僕は友だちを作るのが下手だからね。

「……」

 見慣れた風景を横目に僕を乗せた車は、都会へと向かった。

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田舎から都会への飛翔 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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