雨の日のこと、姉妹ということ

バブみ道日丿宮組

お題:うへへ、雨 制限時間:15分

雨の日のこと、姉妹ということ

 雨の日、ふと思う。

 誰かが隣に立ってくれたなら、と。

「……」

 でも、現実はそうじゃない。

 恋人も友だちもいない。

 バス停で唯一人バスを待つ僕だけ。

 そもそもバスを他の人が使ってるのを見たことがない。乗客もいつも運転手と僕の二人っきり。シャトルバスだから他の客が乗らないのはわかるけど、生徒がいないのはとても不思議。

 運転手に聞けば謎は解けるかもしれないけど、僕にそんな度胸はなく……。

 謎は謎のままだ。

 でも、いいんだ。

 どうせ話題が生まれても使うことはないし、家でもハブだし……。

「はぁ……」

 いっそのこと雨に打たれて帰ってみるべきか。不思議がるか、透けた下着を見るために誰かが見てくれるかもしれない。

 露出癖はないから確証はないけど……きっと誰にも見向きもされないからそんなことをもしかしたらするのかもしれない。

「……」

 スマートフォンを取り出し、SNSを開く。

 そこではネット上の知り合いがあれやれこれの話題をつぶやいてる。このSNSでは交流はあまり見ない。繋がりはあってもお互い不干渉。いや……僕が見ようとしてないだけかもしれない。一応そういう機能はあるんだし。

 僕はそんなSNSに話題にもならない雨の画像を添付した。

 ただの雨雲。異常性のない雲と雫。

 なにが楽しくてそんな画像をアップロードしたのかと甘い考えに支配されてると、スマートフォンが震えた。

「……?」

 なにかと思えば、唯一繋がりがある人物が僕に返信してた。

『お姉さまはいつも憂うつそうなものを撮ってますね』

 余計なお世話だ。

「……たまたまそうなっていますよ、と」

 返信。

 すぐに反応があった。

『早く帰ってきてください。寂しいです』

 今日もまた妹の世話をしなきゃいけないんだと思うと、憂うつ感溢れる画像をアップロードしてるのは偶然じゃない気がしてきた。

「……ん」

 でも、妹には僕しかいない。

 家から出れる僕と、家から出られない妹。

 考えるまでもなかった。

 学校で1人でいようと、バスの中が1人だろうと、バス停に誰もいないかろうと、時は動いてる。

 そんな世界に取り残されてる妹は僕がいなければ、時が動かない。

『果物買って帰るから待ってて』

 そう返事を書いてると、バスがやってきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

雨の日のこと、姉妹ということ バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る