想い

バブみ道日丿宮組

お題:薄汚い事故 制限時間:15分

想い

 声が聞こえる。

 私の名前を呼んでる。

 動けない。

 指先が反応しない。

 どうして。どうしてだろう。

 私はただ普通でありたかったのに。

「……ぁぁ」

 声もだんだんと聞こえなくなってきた。

 死ぬんだと思うと後悔が頭によぎった。

 大好きな友だちに騙されて屋上から突き落とされた。

 このままじゃ友だちが殺人犯になってしまう。

 落ちる瞬間に見た友だちの表情はとても暗かった。

 こんなことをするような人じゃないのはわかってる。

 今も隣で泣いてくれてる。

「……ぁぁ」

 ごめんね。こんなことになって。私がいじめっこなんかに反攻しなければそんな想いはさせなかったのに。

 赤いランプが点滅してるのが近づいてきた。

 救急車かな。

 これで安心だね。

 今私が笑ってるのかはわからないけれど、友だちを少しでも安心させたかった。

 大丈夫だって一言かけたかった。

 視界が高くなった。

 たくさんの人が私に声をかけてる。

 がたんという重い音が聞こえると、私は白い部屋に入った。

 友だちが手を掴んでくれた……ような気がする。

 意識はそこで途絶えた。


 ☓ ☓ ☓


「おはよう」

「ん……」

 目を開けた時、白い天井と友だちの顔が視界に入った。

「擦り傷以外大きなキズはないって」

 奇跡だよと友だちは付き加えた。

「……あいつらは逮捕されたよ」

「そう……なんだ」

「わたしも罪を受けなきゃいけない」

「そんなこと……ないよ」

 悪いのはあいつらだ。

 友だちはなにも悪くない。

「一応事故って扱いにはなるらしいけど……それはわたしが許さない」

 すすり泣きはじめた友だちになにを言ったらいいのかわからなかった。

 事故は事故だっていいたかった。

 突き落とした事件なんてなかったって。

 幸いのことに私は軽症ですんだ。悪いやつは捕まって、いいやつは捕まらないべきなんだ。

「そろそろ行くね」

 友だちはそういうと病室を出ていった。

 止めることは、私にはできなかった。

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想い バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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