見える人列、見えない空気
バブみ道日丿宮組
お題:誰かは扉 制限時間:15分
見える人列、見えない空気
「恐ろしく人がいるわね」
駅から出て開口一番に少女は告げる。
「そりゃ大イベントですからねー」
少女たちが向ける視線にあるのは長蛇の列。子ども大人男女構わず並んでる。
「あれに僕らも並ぶわけですか?」
「そうよ。今日の部活動はあのイベント内で販売されるグッズを手に入れることなのよ!」
少女がない胸を張る。
「それって個人的な目的じゃないですかね? 部活動っていうならもっと奉仕作業とかなんかあったんじゃないですか?」
少年が首を傾げる。
「奉仕作業したいの? なら、私の代わりに大企業の列に並ぶことを許可するわ」
大企業。それは誰もが欲しがるグッズを販売する企業のことであって、入場待機列とは異なり、大きな列を形成する場所だ。
なお、並んだから買えるというわけではない。
「それって部長に奉仕するだけであって、他に意味を持たないのでは?」
「しょうがないでしょ。欲しいものは欲しいのだから」
自分の望みだというのに少女は偉そうにまた胸を張った。
「まぁいいですけど……どこの企業なんですか」
「えっとね……ま、まずは待機列に並ぶのよ」
はいはいと少年は、少女のあとを追う。
これは昔から変わらない二人の付き合い方。
誰よりも前に進みたがる少女と、それを支援するために手を尽くす少年の。
「外に扉なんてあるんですね」
「あれは入場可能かどうかを設定するゲートよ」
ゲート……と少年は思考を巡らせる。出てきたのは宇宙でワープするのに使う装置だった。
「あんな大きなもの開閉するんですか?」
「できなきゃ作らないわ。それに透明だから気づかないけれど、透明のガラスが張り巡らせてるのよ」
触ってみなさいと少女に言われ、指差す場所を触る少年は驚きに包まれた。
「へぇ、すごいですね。これが入り口まであるんですか」
「そうよ。正確には駅からずっと繋がってるの。外は暑いから少しでも冷気を入れようとしてね」
ガラス張りの室内はただのサウナではと少年は深く考えたが、今自分たちがいる場所が暑くないことに気づき、なにかを探した。
「クーラーじゃないですよね?」
「クーラーに近いわ。この透明な空気が一面に広がってるの」
「そりゃ空気は透明でしょう。見たことないですよ」
わかってないわねと少女がにやりと笑う。
「よーく見てみなさいゲートを」
「なんか脈動してますね」
「そう! アイス枕のように常に冷凍庫をゲートに組み込んでるの!」
「なにいってるかわからないですけど、凄そうですね」
でしょと少女が喜び、その後少年が並ぶべき大企業を告げられるのであった。
見える人列、見えない空気 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます