第3話 クエスト

昨日オオナメクジから助けてもらった二人の少女。名前は変態魔法使いがラミア、まともそうなアンデット使いがスイナ。二人の出会いはまだラミアが幼い時、両親を亡くし墓地で独りで泣いていると現れたのがスイナで色々励ましてくれたのだという。そのかいあってラミアは立ち直り、元々の夢であった魔法使いを目指したらしい。

ラミアは魔法使いは魔法使いでも最強の魔法使いを目指そうとしているようだ。何故最強を目指すのか。それは魔法使いを目指し魔法を習得する為に勉強をしていた際に突然現れたある男に魔法を教わったかららしい。その男の放つ魔法はどれも綺麗でとんでもない破壊力を有していた。それに魅了されその男のような最強を目指すようになったという。だがラミアはどれだけ修行を積もうと魔力は湧いてこない。そこでスイナはラミアの最大の欠点である魔力がないというものを解決しようと【魔力吸収ドレイン】を覚え、アンデットたちを従わせる能力を身に着けた。その結果が今だ。そして俺のパーティーに入ったのだが…………。

「大地を穿ち全てを灰燼と化せ、究極火爆発テリコスグラニティス!」

ラミアの詠唱と共に辺りに轟音が響く。先程まで青々しい草原が広がっていた広場が今は土しか見えなくなっており、町一つ入りそうなほど地面がえぐれてクレーターができていた。

「すごい威力だなー。セレナもそう思うだろ?」

「ああ、一度食らってみたいと思うほどの威力だな…………!」

「…………行くなよ?」

「……………………………………ああ、大丈夫だ」

行かないと言わずに大丈夫というあたり不安が残るのは俺だけだろうか…………?

「スイナはラミアがこんな魔法使えるの知ってたのか?」

スイナはコクリと頷き、スケッチブックのような物を取り出した。

その紙に文字を書いていき、俺とセレナに見せてきた。が、俺は読めない。そろそろ異世界語も覚えておくべきか。俺の様子を見て察したセレナが書いていることを読み上げてくれた。ここにきて初めて役に立ったなと心から思った。

「えーと何々、前から習得してたけど私がその分の魔力を集めてあげられなかった。使ってみたそうにしてたからカズヤには感謝してる、らしいぞ」

………………なんて良い子なんだ。セレナはドMでラミアは魔法の変態、変な奴らばかり集まってしまったと思ったらスイナは…………圧倒的正統派美少女! これはもう女神としか思えない。

「というかスイナ。会った時から思ってたんだが服ボロボロ過ぎないか?」

俺の質問にまたしても書いて答える。

「私たちあまりお金がないから服が買えなかったの。稼いでくれるラミアの装備を優先させて買ってたら私の服がボロボロになっちゃったんだ。まあ私は別に気にしないし良いんだけどね。ラミアは買おうって言ってくれてたけど服を買うお金なんて装備品の手入れと毎日のご飯代で消えちゃうからと、言ってるぞ。というか良く喋るな、そこまで喋るなら話せばいいのに」

セレナの言葉にスイナは首をブンブンと振る。取れるんじゃないかと思うほどに。

よほど喋りたくないのかなにか理由でもあるのか? まあ勘繰りはよそう。誰にだって秘密はあるもんだ。ひとまず俺は興奮しながら帰ってきたラミアに嫌味を込めて。

「すごい威力だったなぁ。どうだった、俺の魔力を奪って撃った究極火属性魔法の感想は」

「酷い言いようですね。私はカズヤの許可を得て魔力を放っただけですよ」

「いやぁ、俺がそんなに強い魔法撃てないのに撃てて良いなと思ったんだよ。でも本当に魔法ってのはすごいんだな」

「そうですよ! 特にさっき撃った究極火爆発テリコスグラニティスは人類の発明した魔法の中でも最上位に位置する魔法です。私の欲求も満たされるくらいの体に響く具合でした。私を満足させるくらいの威力なので当然、カズヤの魔力量があと三倍くらいあれば王都くらい滅ぼしちゃえますよ!」

「冗談でもやめろ」

こいつが使うのはどうかと思うが本当にすごい威力。まあ何にせよ俺の魔力はもう殆ど無いし今日は実の入がいいクエストもない。とりあえず……………………寝るか。

俺はこの草原で寝転がり目を瞑る。

周りが少し騒がしいが無視をして寝ることにした。《え、寝るのですか!? クエストは行かないのですか。ねえカズヤ! 私今日あの魔法のじーんしか味わってないですよ! ねぇカズヤ!!》

何故か揺さぶられているような気もするがとりあえず無視だ。

《わ、私も寝ようか…………! イタズラとかされても起きないかもなぁー! はぁ眠い眠い…………》

こいつは何を期待しているんだろう。まあ当然無視だな。

《すぅすぅ…………》

…………やっぱりスイナは天使だな。全く……ラミアの方が年下なのになんで可愛げがないのか不思議でならない。

本当にこいつらは…………全く……世話が焼ける奴ら……だな。でも案外悪くない……。俺はゆっくりと眠りに落ちていった。



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