シリーズ 薄っぺらいショートショート

ホワイトロリータ

ショートショート「水素水」

 自国第一主義が各国で蔓延るなか、我が国も戦争へと突き進もうとしていた。


 ある一都市。今日も商売熱心な私とパートナーの男は路頭で「水素水」を販売していた。


 戦争なんて私たちを巻き込まず政府が勝手にやってればいい、などと思っていた。


 しかし私の淡い期待はこの時既に儚く散っていたようだ。


 突如緊急警報が鳴ったかと思うと、次の瞬間、空のキャンバスには尾から火花を散らす、細長い飛翔物が描かれていた。


 まもなくそれは強烈な光を放ち、聞き慣れた音が耳を貫いてきた。これは……


 「ああ、水素の音――」


 音の正体に気がついた次の瞬間、私たちの意識は音源の半径20km圏内のあらゆる物とともに、虚空の彼方へと消え去った。


 第三次世界大戦は、その日打ち上げられた水爆が嚆矢となった。

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