5話
唐突に現れた里森君と西田君。
二人は、ボクたちを一方的にライバル視しているみたい。でも、正直誰だか思い出せないんだよね――誰だっけ?
「貴宝院。特にテメエは許さねえ」
「突然現れたかと思えば、まったく身に覚えのない難癖を付けられてもねえ……」
「うるせー! 女のクセに俺らよりカッコイイとか反則だぞ!? おかげで、どんなに
「何かと思えば、そんなことか」
「『そんなこと』とはなんだっ‼ ムカつく!!」
「落ち着け、里森。ここは例の技で、二人に見せつけるしか」
「し、仕方ねえな」
例の技? いったいなんだろ?
ボクの関心をよそに、二人はサイコロを手にする。
そして、前後に並んで、それを二人の頭の上に持ちあげた。
「パワーをサイコロに‼」
「いいですともっ」
こ、これは合体技っ?
ボクは予期せぬ展開に心を躍らせた。
「カッコイイ〜ッ!!」
まさかこんなことするなんて思っても見なかったよ。
もうアレだね。奈緒ちゃんとの勝負だって言うなら、これは二人の勝ちかもしれない。
……と思った瞬間、ボクの意思に反して顔が奈緒ちゃんの方を向けられる。
なぜか?
それは、奈緒ちゃんがボクの両方のほっぺたを掴んで、無理矢理振り向かせたからだ。
「美樹。勝手によそ見されたら困るなぁ」
奈緒ちゃん、どうしちゃったの?
強制的に突き合わされた顔は不機嫌そのもので、ボクがなにかやらかしたみたいだ。
だからなのか、次の出番が来たときの奈緒ちゃんは、妙に気合いが入っていた。
「小橋さん」
刹那、奈緒ちゃんが離れたところにいる小橋さんに話しかける。
『はいはい、なんでしょ?』
「里森君たちがやってるアレ。ズルくない?」
『ん~、まあルールに則って言うなら、前に立つ里森君がサイコロを投げたという判定になるでしょうかねぇ』
「つまり、私たちもやっていいってことだよね?」
『……と仰いますと?』
そう疑問を投げかける小橋さん。
ボクも奈緒ちゃんが何がしたいのかわからなくて、つい首をかしげちゃった。
ところが、次の瞬間に身体が宙に浮き上がって状況が一変。いつの間にか奈緒ちゃんが股下に潜り込んでいて、ボクを担ぎ上げていた。
「奈緒ちゃん!?」
「美樹。サイコロ持ってくれる?」
「う、うん……。いったい何するのつもり?」
「まあ見てて」
と言って、股下の奈緒ちゃんが再び小橋さんの方を見る。
状況がまるで理解できない――ボクは成り行きを見守るしかできなかった。
あれ? 奈緒ちゃんが投げる番なのに、ボクがサイコロ持ってていいのかな?
「小橋さん。つまり、こういうことさ」
『はじめての共同作ぎょ……じゃなくて、それって吉成君が投げてません?』
「それなら、問題ないよ。私の手をよく見て」
とっさにその言葉の意味を理解する。
だって、奈緒ちゃんの手がボクの手にかぶせるように添えられていたんだもん。
『ま、まさかの合体ぃぃぃいいいい~(意味深)っ!!』
そして、またも小橋さんが理解不能な言葉を叫んでいた。
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