第1話 蠢動

 ルーデシア大陸南西部、ルゾルテ共和国の関所。

 岩をくり抜かれて造られた城壁は攻城兵器でも破壊は困難を極める。

 これも対ドラゴン用の人の知恵であった。

 そんな厳つい門で怒鳴り声がーー

「何考えてる、ここはロックダウンされてるんだぞ」

 衛兵のがなり立てる声が寒風に乗る。

 小柄な男が体よりもずっと大きなリュックサックを下ろすと……消えた。

 気がついたら注意した衛兵が倒れていた。

 呆気にとられる衛兵達、槍を握り返して敵だと叫ぶ。

 五人が一斉に突こうとするが、スルスル滑らかに避けては一撃で倒していく。下顎、水月、股関、全て正中線上の急所だった。

 最後の衛兵が尻餅をついてまるで悪夢だと震えながら槍を捨てると、小男が名乗った。

「まあオイラは戦闘医なんで」

 胸元から出したチェーンタグには確かに世界政府公認の戦闘医の証。

 双頭の竜の刻印があった。

「そ、それならそうと」

 言ったそばから衛兵は卒倒した。

 戦闘医の小男に踵落としを喰らったのだ。戦闘医はゆっくり上げた脚を下ろす。

「治したいから怪我させたくなるんだよね」

 微笑みを残し、巨大なリュックサックを担ぎ直して城門をくぐった。

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竜病〜ドラゴンズ・ハイ〜Drag_ons High ヒロロ✑ @yoshihana_myouzen

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