どっち

 あるまちに同い年の二人の農夫がいた。

 甲介は勉強はできなかったが、日当たりのいい肥えた畑を持っていた。

 乙助は勉強は出来たが、日当たりの悪い痩せた畑を持っていた。

 仲良しの二人は毎朝一緒に畑に行き、農作業を終えると一緒に帰った。


 秋になった。


 甲介の畑からはいっぱいの実りが収穫された。

 乙助の畑からの収穫はそれよりずいぶん少なかった。

 乙助は残念に思った。甲介とは同じだけ働いているのに。


 乙助は工夫をし始めた。

 農作業の時間以外の時間も工夫を考えていた。

 考えるのは楽しかった。


 秋になった。


 甲介の畑からはいっぱいの実りが収穫された。

 乙助の畑からもいっぱいの実りが収穫された。

 甲介は不思議に思った。乙助の畑は日当たりが悪くて痩せているのにと。


 甲介は乙助が工夫をしていることを知った。

 そしてその工夫を教えてくれるよう、乙助に乞うた。

 乙助は惜しげもなく甲介に工夫を教えた。


 秋になった。


 甲介の畑からはいっぱいの実りが収穫された。

 乙助の畑からもいっぱいの実りが収穫されたが、甲介のそれよりはずいぶん少なかった。

 乙助はさらに工夫を考え、研究を重ねた。

 そしてそれを惜しげもなく甲介に教えた。


 何回もの秋が過ぎていった。


 甲介は収穫がいっぱいなので、民に安く大量に売ることができた。

 甲介はお金持ちになった。そしてまちの権力者になった。

 乙助の作物は甲介が安く売るのでたくさんは売れなかった。

 乙助はお金持ちにはなれなかった。しかし、まちの人々から尊敬された。


 二人は今日も仲良く畑に出ていく。


 もし選択するなら、僕は甲介になりたいだろうか、それとも乙助になりたいだろうか。

 あなたなら、どう思いますか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る