ロック感性

「いいか。だいたいロックだから。がんがん決めて行け!」


 春は仕分けが忙しい。

 即戦力として望まれた僕は右も左もわからないまま現場に立つことになった。大変な時だけど君ならできるとチーフからは熱い言葉をかけてもらった。こうなったらもうやるしかない。「当たって砕けろ」のハートで、僕は無数の作品をカテゴライズする仕事に挑んだ。(これまでの人生において自分なりに感性だけは磨いてきたつもり)ささやかな自負を胸に秘めながら。





ロック


ロック


ロック


ロック


ポップ


ロック


ロック



「そう。だいたいロックだ。ペース上げて行け」



ロック


ロック


ロック


ロック


クラシック


ロック


ロック



「直感だぞ。考えるなよ」



ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック



「そう。だいたいロックなんだ」



ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ポップ


ポップ


ロック


ロック


ロック


ロック


アート


ロック


ロック



「頭だけ見て。時間かけたらAIでもできるよ」



ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック



「ちょっとストップ! バカヤローこれはパンクだろ!

 無茶苦茶尖ってんじゃん。わからなかったら聞けよ」


 強烈なダメ出しを食らい自信が揺らぐ。簡単そうで奥が深い。しかし、チーフはスピードが命だと言う。自信がなくても突き進まねばならない。



ロック


ロック


ロック


ロック


パンク


ロック


ロック


パンク


ポップ


ロック


ロック



「おー、ちょっと待て待て!

 演歌だよ。普通にど演歌じゃん。

 これで朝起きれるか? そこだけ考えてやれよ」



ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック



「そう。いいじゃないか。ノってけノってけ」



ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック



「わかってんじゃねえか。ノってんな」



ロック


ロック


ロック


ポップ


ジャズ


演歌


ロック


演歌


演歌


クラシック



「おーっ。よくわかったな!」



ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


パンク


ロック


ボサノバ


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


オルタナ


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック



「おー、待て待て! 全然違う!

 調子のんなよ!」


 つかみかけたと思った瞬間に引き戻される。

 階段を一直線に駆け上がるのは無理みたいだ。


「パンクですか?」


「テクノロジーだよ! 畑違いもいいとこだ!

 何でもロックと思ったら大間違いだぞ!

 魂入れてやれ!」


「はい!」



ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


サイエンス


ロック


ロック


パンク


テクノロジー


ロック


ロック


ロック


演歌


ロック


ロック


ロック


ロック


クラシック


ロック


ロック


ロック


ワーク



「……ですよね」


「そうよ。自信持て。ちょっと社長に呼ばれたから、一人でやっといて」


「がんばります」



ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ガジェット


ロック


ロック


パンク


グルメ


ロック


ロック


サッカー


ロック


小説


グルメ


ロック


ロック


オルタナ


アート


創作


コラム・エッセイ


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


詩歌



 力なくドアが開いて、戻ってきたチーフは浮かない顔をしていた。


「もう、適当でいいよ」


「何かあったんですか?」


「来週頭からAIにさせるんだってよ」


「えっ、じゃあこの仕事は……」


「全く、AIにロックがわかんのかね」


「ですよね」



ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック


ロック



「そう。みんなロックでいい」



ロック


ロック


ロック

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