転生したらゾウリムシだった件 ~目すら見えないけど、微生物ならではの力で無双します~
犬童 貞之助
第1話 転生、ただしミジンコ以下
ゾウリムシ。
ばかアホ間抜けでニートな俺でも耳にしたことがある、とっても有名な微生物だ。
外見は細長くやや捻じれていて、
つまりめちゃくそ小さい。
同じく微生物として著名な存在──ミジンコに比べ、このゾウリムシは十分の一にも満たない大きさだという。
〈この期に及んで
思考中、突如脳裏に響く軽薄そうな男の声である。
〈脳裏に響くて。ゾウリムシに脳なんて無いよ? 単細胞生物じゃん〉
うっせーバーカ! お前が「面白そうだから」とか言ってゾウリムシに俺の魂ぶち込んだんだろうがッ!
〈そうだっけ? まあ何でもいいじゃない──あ。君の同期、食べられちゃったよ。ほら、クリプト
淡々と語る脳内の声に、我が身に生える
同期といえば、俺と同じようにして微生物へと転生させられた連中だ。
鼻息の荒く汗を
思い出せる顔は幾つもある。ほんの数分前まで、白くだだっ広い空間で一緒にいたというのに……。今や全員訳の分からん微生物として、池(?)の中に放り込まれている。
その人物(微生物)が死んだというのに、男の声は酷く軽い。いやむしろ、
……この
〈そういう認識もありかな。ぼくは力ある故の神であって、君たちが思い描くような絶対的善性があるわけでもないし。それはそうと、君、そろそろ食べられそうだよ?〉
邪神の声が響くと同時。
体を
おおらかなる水の流れとは異なる、ジワジワ迫る波の気配。
ゾウリムシは目が見えない分、繊毛や触覚器官が鋭い感覚を有しているようだ。すげーな微生物。
というわけで、知覚したなら即逃走。
ゾウリムシたる俺に闘争なんぞ不可能であろう。コマンドは「逃げる」だけである。
俺の体にはヒレや力強い筋肉など存在しないため、センサーの役割を果たす繊毛を使って移動する。毛で泳ぐといえば間抜けだが、体そのものが小さいため毛というより舟を
お毛々を巧みに動かしスイスイス~イとその場を離脱。
ガハハハ。敗北を知りたい。
などと、余裕こきまくっていると──。
〈あッ。食われた!〉
──尻(?)に激痛が走った。
おぎゃぁぁぁあああ!? 痛えッ! ケツが、穴が増えるぅぅう!?
〈クリプト藻の子が食べられたって言ったじゃん。あの子は長い
解説サンキュークソッタレ!
ちくしょう。目が見えねえから、ぶっ刺しからの丸呑み行動をしてきた相手がどんな奴かわからねえ。
じわり、じわりと。繊毛を剥がし圧し潰していくような圧力が、ケツから腹の辺りにまでのぼってくる。
全力で身を
生物としての筋力が絶対的に違う。そう思わせるほどの圧倒的
絶望。その二文字が、絞った雑巾のような我が身にずしりと沈む。
俺はこのまま、訳の分からんまま一呑みにされちまうのか……。
〈君は藻の子より体が大きいから、まだ何とかなるんじゃない? ほら、
身代わりもクソも、単為生殖なら増えた存在も全く同一なんだが……。
しかしクソ野郎に突っ込んだところで、がっちりホールドされている現状を脱する術は思い当たらない。このままガジガジと食われていくよりは、分裂脱出に
背中の上あたりにある排水器官から水を吐き出し、覚悟完了。
うねうねともがいて時間を稼ぎつつ、分裂のためのエネルギーを絞り出す!
ゾウリムシの底力ってやつを見せてやるぜ! うおおおッ!
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