第10話 真夏の夜のノーブラノーパン


ピロリロリン♪リロリラリン♪


夏の陽が陰り、夕方の風が涼しくなった頃。


夕食のコンビニ弁当を食べ終わり、ハナの海パンをゴミ箱に入れるかどうか迷っていたヒデの携帯に、フウカから着信が入る。


フウカ「もしもし?メール見たけど異常ないみたいで良かったね。」


ヒデ「本当に擦り傷だけだったみたいだ。さっき軽くジョギングしたけど問題なさそう。」


フウカ「今、家?」


ヒデ「ん?そうだけど?」


フウカ「ヒデのタオル間違えて持って帰ってきちゃったみたいなんだよね。疲れてなかったら、今から返しに行ってもいいかな?」


ヒデ「おう。大丈夫だけど別にタオルなんて次の部活の時で、」


フウカ「近くに!近くまできちゃってて!ちょっと用事があってね。それでなんだけどついでだから!」


ヒデ「わかった、気をつけて。」


ゴロゴロゴロゴロ……


昼間あんなに澄み渡って晴れていた空は、夕焼けとともにどんどん風が強くなり、分厚い雲がかかり始めどんどん暗くなっていく。


ヒデ「雨降りそうだな……。フウカ……自転車かな……。」


ヒデの予想通りバケツをひっくり返したような雨が、あっという間に降り出し、10分ほどしてびしょ濡れになったフウカが自転車でやってきた。


フウカ「さっきまであんなに晴れてたのに……こんなことある?」


ヒデ「ほら濡れるから早く入って。」


ヒデが大きなバスタオルを広げて、フウカの頭にバサっとかける。ずぶ濡れの子犬を揉みくちゃにするかのようにヒデは両手でフウカの頭をガシガシと拭く。


フウカ「ちょっ、せっかく髪セットしてきたのに……」


ヒデ「ん?ほら、早く拭けって。風邪ひくよ。」


バスタオルがスルッと落ち、少し赤くなったフウカと目が合う。


思わずその可愛らしい頬を両手で押さえてしまった。


ヒデ「冷たっ!」


フウカ「うん、なんか寒いかも……」


ヒデ「風呂入れよ。今日、家にいるの俺だけだからゆっくり使っていいし、とにかく温まって。」


フウカ「えっ……うん、じゃあお借りしようかな……ありがと。」


フウカが風呂場を借りている間、ヒデはとにかく落ち着かなかった。


いつも強気なフウカが、ずぶ濡れでなんだかしおらしく見える。


されるがまま、バスタオルに包まれ頭をもみくちゃにされながらも、身を委ねて頬を赤くしてたのも、なんていうか……。


どうしちゃったんだ。いつもの調子なら文句を言いながら自分でサッサと拭きそうなのに。


そして何より白いTシャツはピッタリ張り付いて本人は荷物を前にして隠しているつもりだったが、どんな柄の下着なのかもはっきり分かってしまった。


合宿でフウカのビキニ姿を見てはいたものの、濡れた服に下着が透けているのを、直接目の前で見たのは初めてだったし、


バレないように恥ずかしがっている事すらも隠そうとしていた可愛いフウカに、


手が伸びそうなのを、必死で自制したのは我ながらよく頑張った。


平然を装って家にあげてしまったが、この後、もう身が持つ自信がない……。


ソワソワ、ウキウキ、ドキドキしながら、リビングをウロウロして


ソファーのクッションの位置を変えてみたり


カーテンを閉めたり開けたり


もしもの時のために自分の部屋を急いで片付けたりしながら、ヒデの妄想は止まらなかった。


フウカ「ヒデ!ごめん!何か着替え……かしてくれる?」


ヒデ「え?あ、そうか、そうだよね、何か持ってくよ!」


フウカは全身ずぶ濡れ、着替えなんてもってない。


しまってあった洋服の中から適当に選ぶ。あれ、下着はどうしたらいいんだ?俺のパンツ履くの?お袋の?いやいやまさか。


ノーブラノーパン?

ノーブラノーパン!

ノーブラノーパン!!

仕方ないよね!

ノーブラノーパン!!!


ドキドキ、ワクワク、ウッキウキで、脱衣所の扉に手をかける。


ヒデ「開けるよ?」


フウカ「うん……」


バスタオルに身を包む風呂上がりのフウカがそこに、

はおらず、浴室の扉はしめられ、フウカはしっかり避難していた。


ヒデ「……ここに……置いて……おくから。」


フウカ「ありがと。後で洗濯機使っていいかな?」


ヒデ「……あ、そっか、気がつかなくてごめん、乾燥機も使えばいいから!」


フウカの脱いだ洋服は脱衣所になかった。風呂場で雨水を搾ったりしていたのだろうか。誰だって探すよ。うん、探すって。脱いだお洋服ないのかなーって。


脱衣所の扉を閉めて、期待と興奮が止まらなかった。


なにこれ、なにこのシチュエーション!


年頃の男女が一つ屋根の下、今日は親は帰ってこない。外は大雨!服が乾くまで時間かかるね!フウカちゃん泊まっていくとか言ったらどうしよう!ウフフ!ありがとう神様!!


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