エリオットに恋をしてepisode1

クロコリコ

第1話 真夏の海の男たち


青い空 白い雲 黄色い向日葵

刺すような太陽 アスファルトからの照り返し 


忙しい蝉の声が全身の汗をさらに不快なものにする。


ヨシキ「うわっ!部長、この坂やばいっすね!」 


ヒデ「スキーならちょうどいいコースなんだけどな。」


ヨシキ「ヘトヘトに泳いだ後に、荷物担いでこの坂のぼって帰ってこなきゃいけないって言うのが、マジ萎えますね……」

 

スキー部の部長ヒデが後輩ヨシキの肩をガシッと掴む。


ヒデ「ふふふふ、そんなことを言うな、後輩よ。今回はいつもの合宿とは違う!海だ!水着だ!水着なんだ!


今までの俺たちはどうだ?夏の合宿は毎年山だった!ジャージでむさくるしく体力作りしていたが、そんなのは俺の代でもうおしまいだ!


スキー部だからって何も一年中山に登ることはないんだ。後輩、耳をすましてみろ、母なる海だって俺たちに青春しろと言っている!


そして見えるか?この先で水着の美女たちが俺たちを待っているのだ!」


ヨシキ「マジ熱いっすね!!部長!ついて行きます!!」


フウカ「何、馬鹿なこと言ってんのよ、ほら、さっさとこの荷物下ろして。」


健康的に引き締まった脚がショートパンツから伸びる。副部長のフウカだ。


フウカ「荷物運びは男子の仕事だからね〜。私たちは先に食材買ってくるから。」


颯爽と女子部員たちは車に乗り込み、男子部員と大量の荷物を置いていった。


ヨシキ「女子達の装備も今日は露出多めでテンション上がりますね!にしても、なんか今回の荷物多すぎません?俺たちだけでこんなにいります?」


ヒデ「ふふふふふ、よく気づいた、後輩!今回は俺たちスキー部員だけではなく軽音部も合宿に参加する!


軽音部顧問のサクラ先生ももちろん参加だ!そして、チップさんも飯を作りに来てくれる!!!」


ヨシキ「なんすか、それ!激アツじゃないっすか!!」


ヒデ「だろ?昼はバーベキュー、夜はキャンプファイヤーしながらライブで、明日は流しそうめんだ!!!」


ヨシキ「部長!!最高っす!!!」


威勢が良かったのは最初だけ。


いくら高校生といえど、炎天下の下、急斜面の坂道を何度も往復してバーベキュー道具やらパラソルやら機材やらを持ち運ぶのはかなりのトレーニングになる。


ヒデの頭に巻いたタオルまですでに汗でぐっしょりだった。


ヨシキ「マジ、きつかったっスね。」


ヒデ「後輩、勝負はまだまだこれからだ。ビーチの美女たちやスキー部、軽音部の女子部員たちとお近づきになるのが、この合宿の極秘プロジェクトであり、


1人でも多く男子部員達を男にするのがこの夏最大のミッションだ!」


ヨシキ「マジ部長の鏡っすね!」


ヒデ「そうだろう!そうだろう!」


焼けた肌で元気に盛り上がるスキー部とは対照的に、砂浜では先に待機していた色白軽音部男子たちがテントを設営していた。


ハナ「マジであちぃ……焼け死ぬ……おーい!パク!それ、ちょっと取ってくれ!」


パク「ハナ先輩!これですか?」


ハナ「違う違う……もっと、その、……長いやつだよ!」


パク「こっちですか?」


ハナ「ちがう!……あ〜もう、そこらのパイプ全部もってこい!」


バンドマンと太陽は相性が悪い。潮風はもっと悪い。そんな中、なぜ軽音部が今回の合宿に参加したかと言うと、目的はスキー部と同じだった。


着々と準備が進む中、赤いオープンカーが坂の上に止まる。


助手席のサングラスに大きなつば広帽子を振る女性が降りた瞬間、数名の男子生徒が我先に手をとらんを坂を駆け上がっていった。


パク「部長、チップさんとサクラ先生来ましたよ。」


ハナ「インドアな俺たちには向いてない仕事だよな……とっとと仕事終わらせて、早く飯にしてもらおうぜ。」


女子部員たちと食材も到着し、昼食の準備は進むのであった。









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