君も僕もきっと死ぬだろう。

エリー.ファー

君も僕もきっと死ぬだろう。

 君のことを想って眠っている。

 けれど、きっとこの想いは届かない。

 二億光年先の世界では、地球は豆粒になりませんのですよ。はい。

 この言葉も届かないばかりか、想いもおいてきたわけではないのです。

 哀れなホモサピエンスである。

 この無機質な空間に誘われて、そのままやってきて無限の旅路。

 一応、人間として、宇宙飛行士として、一人の研究者として、とてもよい機会に恵まれちまって候。

 気持ちは溢れて、今ここに。

 不思議と涙が溢れないものだから、自分のことを忘れそうになりますけれども、そういうのも悪くないなぁ、なんて思う私。

 どうせ、私一人の空間だから。

 独り言は言い放題だし、まぁ、変人呼ばわりをされなくて済むし。これはこれで悪くないかも。

 自分って、こんなに口調が変わる人間だと思わなかった。あぁ、自分のことを自分って言うタイプの人間だと思っていなかった。私は、私のことを私って呼ぶものだと思っていた。

 一人が長いと、こういうことになるのか。

 これは面白い。

 もう、ちゃんと爆発したのだろうなあ。

 地球は木っ端みじんだろうなあ。

 私が地球を出てから三分後くらいに爆発するように仕掛けた原子爆弾。あれは、地球を三つも四つも壊せるくらいの代物だから。

 帰れないなあ。

 地球はない。故郷はない。私を知っている誰かもいない。

 孤独で自由。宇宙の露になり果てる私に贈る、一方的で鮮やかなナルシズム。

 私は幸せです。先輩。

 あぁ、先輩も死んだか。人類が死滅するなら、当たり前か。

 先輩は良い人だったなあ。

 私のことを常に気遣ってくれた。結局、下心があったから、無償の愛というわけではなくて。

 それらしいことを、それらしくはしたけれど。

 その内容は絶対に一人になった今でも言えないけど。

 先輩は、気づいていたのかな。

 地球を吹き飛ばそうとする私の目的。

 私のことを先輩は知っていたのかな。私は先輩のことを知っていたのかな。色々教えてくれるヤバい人、それを黙って聞いている変な人、そのコンビでしかなかったのかな。

 私は、先輩のことは好きになれなかったけど。

 でも。

 先輩のことをちょっと記憶のどこかにおいてあげるくらいのことはしていいと思うなあ。

 もう、先輩は私の中でしか生きられるないわけだし。それくらいのサービスはしてもいいか。

 本当に、不潔で気持ちの悪い、女の先輩だったなあ。綺麗系だったから、周りからの評価は高かったみたいだけど、いや、もう肌とか死んでたし、毛穴とかマジでキモかったからなあ。

 女の人が苦手なのかしら、緊張してるのかしらとか言ってきたけど。

 お前が苦手で、お前の汚い肌が私の肌に触れると思うから緊張してただけですよ、先輩。

 そう言えばよかったな。

 あぁ、疲れた。

 それより、私の好きな人のことを想いながらそのまま飛んでいこう。寂しくなる前に心の中を好きな人で満たして飛んでいこう。

 それって地球にいてもできなかったことなんだし、ここに来てそれができるようになった私って、結構恵まれてるって言えるのかもしれない。

 あぁ。

 すごいな私って、結構、冷静だ。

 どこかで空気がなくなって死ねるだろうし、まぁ、そこまでだなあ。

 あぁ、なんていうか。

 私が好きだった人に、私が好きだったことは伝わらないんだなあ。

 全部いやになって壊しちゃったんだし、そりゃそうか。あぁ、地球を壊す必要まではなかったかも。

 ううん。

 失敗したな、こりゃ。

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