恋愛 短編集
Crosis@デレバレ三巻発売中
雨は嫌いだ
雨は嫌いだ。
癖っ毛ぎみの私の髪の毛は刎ねるし、自転車通学の人はカッパを着る面倒臭さも増えるだろうし、徒歩通学の私は傘をさして通学するのだがローファーがずぶ濡れである。
その為どうせ濡れるのならばと素足でローファーを履くのだが、これがまた気持ち悪い。
空気は重いし、気分も朝から滅入る。
学校に着けば替えの靴下は履かずに裸足で一限目は従業を受けてから靴下を履くのもローファーを素足で直接履いた足をタオルで拭くのが嫌だからである。
万が一他の箇所が濡れてしまった時用と足用で二枚用意するのも嫌だし、後日足を拭いたタオルで頭を拭いている所も見られたくない。
もし顔が濡れても薄く化粧をしているからタオルで顔を拭く事すら出来ない。
なんならトイレで化粧直しをしなければならなくなる。
だったらと自然乾燥に任せているのだが、裸足で過ごすこの一時間はなんだか居心地が悪い。
そんな時、何も考えずにずぶ濡れで登校してガシガシとタオルで頭や足を拭いているバカな男子が羨ましいとすら思える程には。
「お前、ホント雨の日になると機嫌悪いなっ!雨は雨で雨の良さがあるじゃないかっ!!」
「あなたみたいな性格ならば良かったわと、少なからず思う時もあるのは確かね」
「だろっ!?」
「でも私は女性だし、繊細なのよ。分かってちょうだい」
「まぁ、人それぞれだしなっ!」
そう言うとバカな男子は別の輪の中へと行ってしまう。
バカゆえに壁を作らず誰とでも仲がいい。
クラスの潤滑油でもあるのだろう。
そんな事を思いながら私は机の中に置きっぱなしである読みかけの小説を読み始める。
クラスで孤立しているわけでも無いし友達がいない訳でも無い。
だけれども、もともと感情を顔に出すのが苦手な上に眼鏡をかけているのでワイワイするのが苦手な人という認定をされているのは分かる。
別に苦手という訳でもないし、時折聞こえてくるクラスメイト達のバカ話も偶に笑いそうになることだってあるのだけれども盗み聞きしているのがバレる事が恥ずかしくて必死に我慢していたりした結果、表情を表に出すのが苦手になっただけである。
逆に言えばポーカーフェイスは得意である。
だけれども、そんな私も嫌いじゃない。
そんなこんなで、時間は止まることなく流れて行き一日が終わる。
「お前、また傘忘れたのか?」
「別に良いでしょう?傘くらい忘れても死にはしないわ」
「そりゃそうだけどさ、どうやって登校してきてるんだよ」
「親の車」
「かぁー、良い御身分だな」
「そりゃどうも」
そして私はバカな男子と適当な会話をしながら、その男子がさしてくれた大き目の傘の中へと入り二人並んで帰宅する。
「まさか、帰りの方角が途中まで一緒だったとはな」
「ホント、偶然ね」
ホントは真逆の方角だし徒歩通学なのだけれども、こんな時にさらっと嘘を吐けるポーカーフェイスな自分は有難い。
故に表情を表に出すのが苦手な自分だけれどもそれはそれで気に入っている部分もあるのだ。
「顔が少し赤いけど風邪でもひいたんじゃないのか?帰ったらぐっすり休めよな」
「ただ単に低気圧が苦手なだけよ。でも心配してくれたありがとう」
「あー、酷い人は偏頭痛がキツイ人もいるらしいな」
きっとこの人は私の事は一クラスメイトくらいにしか思っていないのだろう。
だから恥ずかしげもなく傘の中へ異性を入れれるのだ。
そんな私のカバンの中には折り畳み傘。
雨は嫌いだ。
嫌な事を上げればキリがない。
だけれども、待ち遠しくもある。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます