ヤンデレ姉VSヤンデレ妹
寄紡チタン@ヤンデレンジャー投稿中
ヤンデレ姉VSヤンデレ妹
「なぁ、ヤンデレな姉ちゃんっていいよな」
10分程続いていた沈黙を、唐突な話題で破ったのは大樹だった。
「は?」
大樹の言葉に亮介はすぐさま反対の意思を主張した。
「いやいや、ヤンデレなら姉じゃなくて妹の方がいいに決まってるだろ」
互いの反する意見を認識し合ったところで、大樹は好戦的に返事をした。
「妹?何言ってるんだよ、正気か?」
その言葉を開始合図に、二人の戦いの火ぶたが切られた。
「ヤンデレにぴったりの属性は姉に決まってるだろ。頼りになって活発で、なんなら弟をちょっと雑に扱うくらいの姉が、実は自分に対してだけドロドロに嫉妬や独占欲を持っているっていうギャップがたまらないね」
大樹はヤンデレ姉が良いと主張する。
「いいや、妹だね。か弱くて守ってあげたい妹こそ相手に執着するヤンデレにハマってる。幼いが故に一途過ぎて、歪んだ恋愛感情を暴走させるところがいいんじゃないか」
亮介も負けじとヤンデレ妹の良さを語りだす。
「束縛されるなら母性がある年上の方がいい。『私が全部やってあげるから私の事だけを考えていて欲しいの!他の子のコトなんて見ないで!』なんてヤンデレな姉に言われてみたいだろ!」
「依存されるなら健気な年下の方がいい。『私にはお兄ちゃんしかいないんだから私の事を捨てないで!お兄ちゃんの為ならなんだってするから!』なんてヤンデレな妹に言われてみたいだろ!」
「姉って言うのは弟が生まれた時から全部を知ってるんだ!これは実質幼馴染の上位互換!弟のいいところも悪いところも全部知った上で愛してくれるなんて最高じゃないか!ずっと大人だと思っていた姉がなりふり構わずに暴露せざるを得ない自分への愛情!絶対ヤンデレ姉にするべきだ!」
「生まれた時から知っている妹という純粋無垢な存在が、兄に対して深い愛情を持つという禁忌的な魅力が何故わからない!考えてもみろよ、ひたすらに可愛い、守ってあげたい、危なっかしいと思っていた妹が初めて見せる大人の顔!エゴ!まだ子供だと侮っていた妹がいつの間にか自分の想像の付かない恋愛に苦しんでいるだなんて、こんなの受け入れてあげたくなるだろ!絶対ヤンデレ妹だ!」
二人の口論は決着がつく様子が無い。
「ヤンデレな姉は素晴らしい!」
「いや、ヤンデレな妹の方が素晴らしい!!」
まるでここで折れたら死ぬとでも言わんばかりの熱量で二人は意見をぶつけ合う。
「「なぁ、お前はどっちがいいと思う!?」」
二人は声をそろえて俺に問いただす。
俺は知っている、大樹は本当は年下が好きで、母性的な女性よりアイドルみたいな可愛い系がタイプ。そして小悪魔で自分に興味がなさそうな女の子に振り回されたい趣味だ。
俺は知っている、亮介は本当は年上が好きで、健気で可愛い女の子よりも色気で自分を翻弄してくれるよう女教師っぽいセクシーな女性がタイプ。そして飄々とした態度で弄ばれたい願望があると言っていた。
当然二人とも、ヤンデレな姉にも妹にも興味がない。
余談だが、昨晩俺の姉と妹がヤンデレバレした。それぞれの部屋の壁一面には隠し撮りされた俺の写真、机には俺の生活一挙一動を観察した日記、棚からはなくしたと思っていた俺の私物。
そして現在ここは俺の家だ。さらに言うと、大樹と亮介は俺の姉と妹に、それぞれ命と同価値と言える程に大切なモノの生殺与奪の権を握られた状態にある。
どうやら俺の返答次第では大樹か亮介の大事なモノ、もしくは命が刈り取られてしまう。
さて、俺はどうやって彼女ができたと切り出そうか・・・。
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