17話 温泉でほっこり(?)かしましトーク

今、わたしはこの世界に来てから最大級のピンチに陥っています。何故かというと……


「ほらほらっ、やっぱりおっぱいは大きい方がいいだろ? うりうり〜」


 そう言いながらわたしの右腕にそのたわわな胸をタオル越しに押し付けてくるミリアちゃん。


「いいえ、スレンダーなスタイルが女の子には似合いますわ!」


 左からはユニちゃんが控えめな、けど柔らかい感覚の胸をくっつけてくる。


「あう、恥ずかしくてもう駄目ー!」


 ついにわたしは2人を振り解き、温泉から上がって身体を拭く。

 何でこんなことになったかと言うと……


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「よし、それじゃあ出発するぞ。準備は良いか?」


 ミリアちゃんの一声にみんなが頷く。ここ、港町アクベンスでの生活を堪能したわたし達は次の目的地、自然都市アルゲティという所に移動する事にしたのだ。

 そうしてアルゲティへの旅を続けて3日目、そろそろ野宿の準備をしないといけなさそうな時間になってきた頃、わたし達は変な匂いに気付く。


「この匂いは……まさか温泉ですの?」


 ユニちゃんが言う通り、周囲を探索してみると湯気が出てる天然の温泉がそこにあった。


「丁度いいな、野宿でお風呂に入れないと思ってたから助かるぜ」

「ミリアさん、お待ちを。問題なさそうに見えますけど一応害がないか確かめてみますわ」


 ユニちゃんが何やら呪文を唱え始める、少しして詠唱が終わると温泉の水が淡く青色に光った。


「ええ、これならわたくし達が入っても問題ありませんわ」


 その言葉を聞いてニコニコ顔のミリアちゃん。


「よし、それじゃあ今から入るぞ、ユニ、カオル、アリス。ツバサは周辺の警備を頼む」


 わたし、温泉に入るのも初めてだから楽しみ……って、うん?


「あれ、今女の子組と一緒にわたしの名前が……?」

「日も暮れそうだし時間短縮だ、初めて合った日は結局入れなかったからな。恥ずかしがること無いだろ?」

「う、それはそうなんだけど……やっぱりわたしの身体は男の子な訳で……それに恥ずかしいよ」

「あはは、それならツバサと一緒に入るか?」

「そ、それはもっと駄目だけどっ!」


 そんな会話をしているとアリスちゃんが潤んだ目でこちらを見てくる。


「カオルお姉ちゃんと一緒に温泉入れないの……?わたし楽しみにしてたのに……」


 ……こんなお願いされたら断れないよね。


「わかった、一緒に入るよ……けど、裸は流石に恥ずかしさが限界だからタオルだけでもお願いします……」

「あーはい、わかったよ。しかし、カオルにとっては役得でしか無いと思うんだがなぁ、女の子3人と一緒にお風呂に入れるとか。身体とか心の性別関係なく、な」

「うう、そうは言っても恥ずかしいものは恥ずかしいもん……それじゃあ着替えよ、あまり翼君を待たせたくないし」


 そうして女の子組と一緒に温泉に入る、お湯が乳白色に濁ってるからあまり肌を見れないのは助かるね。

 けれど、やっぱりタオルは巻いているとはいえ裸な訳で。やっぱり他の娘の肌に目がいってしまう、特にミリアちゃんの胸に。

 すると、わたしの目線に気付いたのかミリアちゃんが含みのある笑顔で話しかけてくる。


「ん、あたしのおっぱいが気になるか? まあカオルになら見られてもいいぜ」

「いや、気になるというか羨ましいなーって。ほら、わたしは成長の見込みが無いから……うう、言ってて悲しくなってきた」


 そう言うと、ミリアちゃんとユニちゃんが悲しそうな顔をする。アリスちゃんはどうやらあまり意味が分かってないようでキョトンとしていたみたい。


「あー……やっぱり女の子だもんな、カオルは。おっぱいが気になる年頃か」

「カオルさんの気持ちもちょっとは分かりますわ……わたくしもまだ成長の余地はあると思うけどまだまだ控えめですもの……」


 ちょっと暗い雰囲気になっていると、今まで喋らなかったアリスちゃんが問題発言を出してくる。


「カオルお姉ちゃんって、おっきなお胸とちっちゃいお胸、どっちが好きなの?」


「ふえっ!? え、えーと……」


 返答に詰まっているとミリアちゃんとユニちゃんがわたしの両脇によって話しかけてくる。


「ふふ、やっぱり女の子の憧れは巨乳だろ?」

「いいえ、控えめだけど確かにある胸こそが美学ですわ!」

 なんだか、わたしの預かり知らない所でバトルが起きてる気が……


「それじゃあ、カオルに聞いて確かめるか!」

「それでは、カオルさんに確かめて頂きますわ」


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 そうして、今の状況になっていた。と言うわけ。


「うう、恥ずかしすぎて限界……答えについてはその人に合ったサイズが良いよねって事にしておいてください……」

「けどわたしの個人的な意見としてはやっぱり胸はちょっとは欲しいかなぁ」


 そう応えると、2人も諦めてくれたのか温泉に浸かったまま返答してくれる。


「わかったよ、やりすぎたのは反省する。あたし達もそろそろあがるか」

「そうですわね、ツバサさんを待たせてはいけませんし」


 そうして身体を拭いて着替えたわたし達、翼君に交代しようと声を掛けると


「……言い難いのだが、声がこちらにも聞こえて来てたぞ。仲がいいのは結構だがあまり大声で話す内容では無いな」


 あっちゃー、聞こえちゃってたか。男の子にあの内容を聞かれるのは恥ずかしいね……

 と思っていると、翼君が言葉を続ける。


「所で薫、男の身体にコンプレックスが有るなら性別転換の魔法器を探さないのか?」


 その言葉に衝撃を受けるわたし。


 「……そっか、そうだよね。魔法がある世界なら身体の性別を変える魔法があってもおかしくないよね。何で今まで気付かなかったんだろう……」


 すると、ミリアちゃんが話しかけてくる。


 「カオル、それなんだがな。次の目的地アルゲティには王立の魔法図書館があるらしい、そこで性転換の魔法についても調べられるんじゃないかと思って次の目的地にしたんだ」


「ミリアちゃん、そこまで考えて……? うう、ありがとう。わたしの為にそこまで考えてくれるなんて」


「なに、良いってもんよ。カオルはあたし達の大事な仲間だからな」


 そうして性転換の魔法について探る旅になったわたし達のパーティー。アルゲティに着くまでにも色々あったけど、それはまたいずれ語れれば。

 ともかく、温泉の出来事から数日後、わたし達は無事目的地の自然都市アルゲティに辿り着いたのであった。

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