9話 結局、受け入れられました
3人に言われ、認めざるを得なくなったわたし。
「うん……わたしの身体は男の子の身体なの……だからお風呂はダメって言ったのに……」
そう答えるしかなかった、暫くの間気まずい沈黙が続いたけど事態が飲み込めたらしいミリアちゃんから質問が飛んでくる。
「どうして女装してたんだ?」
「女装っていうか……わたし、心が男の子っぽく無くて、女の子の意識なの。だから服装も女物を着るのは女装って意識はなくて、なんで女の子の身体に生まれなかったんだろうって……」
そう返すと、みんなは納得したようにうなずく。
「確かにカオルってその辺の女の子より女の子らしいしな」
「未だに信じられませんけど……解りましたわ」
「カオルお姉ちゃんは、お兄ちゃんじゃなくてお姉ちゃんの方がいいのかな?」
アリスちゃんの疑問に答える。
「うん、わたしの事は今まで通り女の子として扱ってもらえると嬉しいかな」
そう答えると、ミリアちゃんが会話に加わってきた。
「カオル、結局風呂はどうするんだ?別にあたしはカオルの身体がどうあれ気にしないが」
「ちょっと恥ずかしいですけど……カオルさんなら間違いも起きないでしょうし問題ありませんわ」
「カオルお姉ちゃんなら一緒に入っても大丈夫だよ」
3人とも好意的に受け入れてくれている、そのことは嬉しいのだけどやっぱり一緒にお風呂に入るのは一線を越えてしまうような気がして気まずかった。
「やっぱり、みんなとは一緒に入れないです。それはいけない気がして……」
そう伝えると、ミリアちゃんが助け舟を出してくれた。
「それじゃああたし達が入った後に入りな、湯が冷めてしまうのはあたしの魔法で何とかする。ツバサが割を食ってしまうけどあいつならきちんと話せば問題ないだろ」
「それで、ツバサにはどうするんだ? 身体の事、伝えるか伝えないか。これはカオルが決めないとな」
「緊張するけど、話してみる。翼くんなら話しても大丈夫かなって思えるから」
みんなもわたしの言葉に納得したようで、翼くんは信頼されてるんだなと感じる。
「まあ、あいつなら拒絶はしないだろうな。それじゃあカオルが風呂からあがったらきちんとツバサに話しな、あたしらも付いてやるから」
そう言うと、ミリアちゃんはブラのホックに手を掛けながら話す。
「じゃああたしらは風呂に入るか、カオルは悪いが待っててな」
流石にみんなの裸は見れないので、服を着て即座に目をつぶって脱衣所から出るわたし。
「……そうか、理解した。男の娘というやつか」
女の子組とわたしがお風呂に入ったあと、わたしの身体の事について話すと翼くんからこれだけの返事が帰ってきた。
「ん? いや、確かにカオルの身体は男の子の体だったけど」
「……この世界では通じないか。気にしないでくれ」
男の娘と呼ばれるのはあんまり嬉しいものではないかな、男の子扱いされてるって事だからね。
そんなやり取りのあとユニちゃんの言葉が入る。
「相変わらずツバサさんは冷静沈着ですわね、
確かにユニちゃんバレた後しばらく固まっちゃってたもんね。
「確かに信じ難いが、信じるしかないからな。それに大事なのは身体ではなく心の有り様だ」
そう言ってくれるのは有難かった、もしみんなに拒絶されてしまったら心が折れていたかもしれない。
「よーし、問題も解決したしツバサも風呂入ってきな。あがったら眠る時間だ」
「ああ、行ってくる」
翼くんが脱衣所に向かい、姿が見えなくなる。それと同時にわたしの目から涙が溢れてきた。
「ううっ、みんなありがとう。わたし、ミリアちゃん達に受け入れられるか心配で……みんなに受け入れられてもらって幸せ者だって感じたら涙が出ちゃって」
するとミリアちゃんがわたしを抱きしめて言う。
「安心しな、カオル。まだ出会って初日とはいえ、カオルは立派なあたしたちの仲間の一人だ。仲間を拒絶なんてできねえよ」
その言葉で、わたしの涙が止まらなくなる。
こうして、わたしの秘密はバレちゃったけどみんなに受け入れられてもらう事ができたのだった。
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