7話 お泊りのお誘い

 食事も終わってわたしたちは街への帰路についていた。みんなと会話をしていると、アリスちゃんが質問を投げかけてきた。


「そういえば、カオルお姉ちゃんは今どこに住んでるの?」

「今は宿に泊まってるの、ずっと宿だとお金が心配だからどうするかは考えないといけないけど」


 そう答えると、ユニちゃんがいかにも名案だって感じで提案してきた。


「それでは、わたくしたちが借りてる家に泊まるのはどうかしら? 部屋に余裕もあったはずですわ」

「お、それは良いな! アリスとツバサはどうだ?」


 ミリアちゃんがそう聞くと2人とも快諾してくれた。


「カオルお姉ちゃんと一緒に過ごせるなら嬉しいなっ」

「ああ、問題無い」


 それじゃあ決まりだ!と喜ぶミリアちゃん。わたしも宿代が浮くのならそれだけで歓迎だったし、みんなともっと一緒にいられるのは嬉しかった。


「よし、それじゃあ今日の夕飯は豪華にしなくちゃな!」

 その後もお話で盛り上がりながら街へと帰るわたしたちだった。




「ようやく街まで着いたね、疲れたー」


結局街に着いたのはもうすぐ夜になろうかという時間帯だった。それから夕ご飯の食材を買ったりわたしの荷物を泊まってた宿に取りに行ったりして、借りているという家に辿り着く頃にはすっかり夜中になってしまった。

 日本と比べて街灯が無いからより暗く感じる、2つの月の光があるから真っ暗で見えないってことは無いけどね。

 そう、この世界では太陽は1個で同じだけど月は2つあるのだ。異世界感を感じる要素だった。


「やっと帰ってきたぜー」


 ミリアちゃんがそう呟くと、家の中に入っていった。


「お邪魔しまーす」


 そう言ってわたしも家の中に入ると、想像してたより広い部屋が目に入る。

 各々が自分の部屋に向かうなか、翼くんは食材を持ってキッチンに向かっていった。


「今日の調理担当は俺だな、準備する」


 その言葉を聞いてわたしは翼くんに提案する。


「夕ご飯作るんだよね、わたしも手伝うよ」

「……良いのか?」

「うん、今日はみんなに支えられてばっかりだったし、わたし料理は得意だから」

「……分かった、それなら調理を頼む」


 そうして翼くんと2人で調理を行っていく、折角の機会なので調理中に色々とお話をしてみる。


「翼くんも日本からこの世界に来たんだよね、来てどのくらい経つの?」

「大体1年くらいだ、はっきりとは測っていない」

「そっか、転生するときにクリスちゃんって女の子と会って異世界について説明受けたりしたの?」

「いや、俺は特に説明もなく気付いたらこの世界に居た。魔法の会得も日暮らしの金も自力で得た物だ、何故か文字は読めたし会話はできたがな」


 そう軽く翼くんは言うけど、言葉から大変さが伝わってくる気がした。わたしが同じ状況だったら生きていけなかったかも……

 そんなことを思いつつ調理を進めていく。ステーキ(ミノタウロスのお肉らしい)も焼き上がってご飯の準備も出来上がったところだった。


「いただきます」


 そう言って並べられた料理を取っていく、まずはメインディッシュのステーキから食べてみる。

 牛肉みたいな味で、油っこくなくかつ柔らかい肉だった。

 異世界の魔物のお肉、地球のブランド牛のお肉にも負けてないかも。

 この世界で何故畜産がされていないのか、その理由がわかった気がした。

 その他にも野菜のサラダなどを食べつつ、みんなと色んなお話をした。わたしの異世界転移のあらすじを話したり、みんなの4人パーティー時代の冒険談を聞いたり。楽しい食事の時間が過ごせたよ。


「ごちそうさまでした!」


 料理を乗せたお皿も空になり、お開きになった。ちょっと食べ過ぎちゃったかも、ダイエットしなきゃ。

 なんて考えてるとミリアちゃんが別の部屋に行って、すぐに戻ってきた。


「お風呂も湧いたな、今日は久しぶりにみんなで入るか? もちろんカオルも一緒にな」


 そう、わたしは重要な問題をすっかり忘れていたのだった。

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