6話 あれ、わたし要らなくない……?

 ミリアちゃん達と一緒に今回の討伐対象のオークが居る洞窟までやってきた。

 回復役として、みんなが怪我したらしっかり治療しなきゃ!

 ……と意気込んでたのだけど、実際はみんな強くて怪我しないから戦いを見てるだけになっちゃった。


「行くぜ、フレアドライブ!」


 ミリアちゃんが呪文を唱えながら、オークの体にパンチを叩き込む。

 ミリアちゃんは魔法で自身の身体能力を上げ、手に嵌めているグローブに炎を纏わせて肉弾戦で魔物と戦う戦闘スタイルらしかった。熱くないのかなと思っちゃうけどそこは魔法、自身には熱くない特殊な炎を作り出しているんだって。


「よーし、ここのエリアは大体討伐が終わったか」


 そう言っておでこの汗を拭うミリアちゃん、確かに周辺にオークの姿は無くなっていた。

 なんでオークの死体が無いかというと、移動中に聞いた話によると魔物たちは肉体はもちろんあるけど同時に魔力でも形作られていて、死ぬと肉体は消え、肉や魔石を残して自然に帰ってしまうらしい。まるで敵を倒したらアイテムを落とすゲームみたいな感じだね。


「よし、そろそろお腹も減ったしご飯にしようぜ、丁度オークの肉があるんで焼き肉だ」


 え、オークの肉って美味しいのかな……さっきまで見ていた相手だし食欲がわかないのだけど。豚の魔物だから豚肉の味?

 なんて思っていると表情に出てたのかユニちゃんから声が掛かってきた。


「ああ、カオルさんはこの世界にやってきたばかりでオーク肉は初めてなのかしら。心配しなくてもちゃんと食べられるわよ、調理はミリアさんにお任せしとけば大丈夫ですわ」


 そうは言っても、なんとなく抵抗感が……まあユニちゃんの言う事を信じておこう。


 オークの討伐が終わり、洞窟から出てきたわたしたち。近くの平原でオーク肉を焼いて食べることにした。


「よし、ここらへんでいいか。ユニ、ボックスから肉と調理器具を頼む」

「わかりましたわ」


 そう言ってクーラーボックスみたいな鞄から次々物を取り出していくユニちゃん。明らかにあの鞄に入りきる容量じゃないのでどうなってるのか気になって質問してみる。


「えと、ユニちゃん。その鞄ってどうなってるの?」

「これはマジックボックスといって魔法の力で沢山の物を入れられるようにした特別な鞄ですわ、ちなみに中に入ってるものは腐らないようになってるの。日常的に使われているけど特に冒険者には欠かせないアイテムですわ」


 なるほど、さすが異世界。もしかしたら現代日本よりも便利なマジックアイテムがあるのかも。

 そんなことを思ってるうちに調理する準備が整ったようだった、ミリアちゃんが炎の魔法で火を付けて切り分けたオーク肉を焼いていく。


「それじゃあカオルのパーティー参加祝いと行きますか!宜しくな、カオル!」


 ミリアちゃんが声を上げると他のみんなもわたしに言葉をかけてくれる。


「これから宜しくお願いしますわね」

「一緒に頑張ろうね、カオルお姉ちゃん!」

「……宜しく頼む」


「みんなありがとう。今日はみんなが強くて出番なかったけどこれから宜しくお願いしますねっ」


 お返しの言葉を言い終わるとミリアちゃんが焼けた肉を載せた木のお皿を渡してくれた。


「ほらっ、肉焼けたぜ。主役特権だ、食べなよ」


 うーん、未だにオーク肉にちょっと抵抗があるわたし。でもいい匂いがしてるので思いきって口に含んでみる。


「あ……美味しい」


 豚肉に似た味で、思っていたよりは淡白な味だった。


「美味しいだろ? まだまだあるからな、ユニ、アリス、ツバサもどんどん食べな!」


 そうして、食事と会話は盛り上がっていったのだった。

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