041 グオーガと人間の策略<グオーガ視点>
俺様は近隣の村を襲い、順調にグオーガ魔帝国を拡張している。これだけ派手に村を襲えば、いくら愚かな魔王でも討伐隊を差し向けて来るだろう。
「面倒だが、そろそろ手を打ったほうがいいかもしれねぇなぁ。おい! 人間どもに連絡しろ。話し合いに応じてやるってな」
俺様は部下に命令を下すと、少し不機嫌になり、飲んでいた酒のグラスを床に叩きつけた。魔王に対抗する為に忌々しい人間と手を組むことにイラついたのだ。
――数日後、人間達が俺様のグオーガ魔帝国までやって来た。この秘密会談はグオーガと側近以外には知らせず秘密裏に行うこととなった。
「人間なんざ気に入らねぇが、俺様は優しい男だからな。条件次第では交渉にも応じてやる」
「さすがはグオーガ殿、魔族の中でも話の分かるお方だ。あ、失敬。私は交渉役を務めさせていただくデンハムと申します」
弱そうな人間族の老人だ。俺様が一番嫌いなタイプだな。
「そうか、デンハム。俺様は面倒な交渉は嫌いなんだ。単刀直入に言おう。俺様は魔王を倒したい。お前達はそれに協力しろ」
「なんと! 魔族であるグオーガ殿が魔王に反旗を翻すのですかな?」
「ああ、そうだ! そして俺様が新たな王になるのだ!」
「にわかには信じられませんな。魔王を倒すと見せかけて人間族を罠にかけようとしているのではないですかな?」
む、たしかに下等な人間からすれば、いつ滅ぼされるかと不安に思うのかもしれんな。ここは俺様の懐の深さを見せつける良い機会かもしれん。
「どうすれば信じるというのだ? 俺様の実力を知れば安心できるか?」
「私達は証明がほしいのです。グオーガ殿が魔王を倒すという信念を持っているという証です。例えば、魔王には一人娘が居ると聞いたことがあります。その娘を
「ソニアか。今は無理だ、あいつは俺様より強い。噂ではレベル6000を超えているらしい。俺様も魔王を殺すべく鍛えてきたがまだレベル4000なんだぞ」
「大丈夫です。これをどうぞ」
デンハムが俺様に革袋を手渡した。
「これは何だ?」
「前回の人魔大戦の際に魔族から奪った秘薬、【倍々の秘薬】です。これを舐めた魔族のレベルは倍になるらしいのです。ただし、2回目を舐めるとこの世からバイバイするという恐ろしい秘薬だそうです」
「いい物持ってるじゃねぇか! ペロリ」
身体の中が燃えるように熱くなる。しかし、嫌な感じではない。力が湧き上がってくるようだ。
『レベルアップ! レベルが8000になりました』
「ああ、もう舐めてしまったのですか。まぁ、宜しいでしょう。これでグオーガ殿はレベル8000です」
「これは……最高の気分だ。今ならソニアにも負ける気がしねぇぜ!」
「いいですか? 使うのは1回限りですぞ。2回目を使った魔族は自我を失って死ぬまで暴れるらしいですからな」
デンハムは口うるさく俺様に言ってくる。まさかやめろやめろと言いつつ、やれと思っているんじゃなかろうか。まぁ、そんなわけないか。
「ああ、分かった分かった。すぐにソニアを攫ってきてやるぜ」
「いや待ってくだされ! 攫うのはこちらの準備が終わってからお願いします。そう! 半年待ってくれたら戦争の準備が整うのです」
デンハムは慌てた様子で待てと言う。攫ってこいと言ったくせに、今度は待てというのか。
「俺様を試したいんじゃなかったのかよ? まぁ、いいだろう。用件が済んだのならばさっさと帰れ」
「……グオーガという魔族は脳みそがないのか。魔王の娘を攫ったら戦争になるのだぞ……ぶつぶつ」
俺様はもう用は済んだので、自室に引き返す。レベルが大幅にアップした俺様は早く腕試しをしたいのだ。デンハムはぶつぶつと何かを呟いていたが、俺様の耳には全く入ってこなかった。
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