035 武器作成開始

 ダークドワーフ地下要塞に戻った俺はカザドの鍛冶屋に向かった。


「カザドは居るか? 鉄喰いの核を取ってきたぞ」


 鍛冶屋にはカザドが居て準備を進めているところのようだ。


「おお! 鉄喰いの核を手に入れたのか! 早く見せてくれ!」


 がさっとテーブルの上の物を地面に落としてスペースを空ける。


「パイソン、アイテムボックス」


 俺はアイテムボックスから鉄喰いの核を取り出して、テーブルの上に置いた。


「おおお! ワシの念願の鉱石だ! このオーラ、なんという美しさだ……」


 カザドは見えない目から涙を流した。カザドにしか見えないオーラが出ているのだろうか。


「武器は作れそうか?」


「まだだ。ソニア嬢ちゃんに頼んだ物が届いたらすぐにでも作業を始めることが出来るんだがな」


 カザドはハンマーを手に取り、ウズウズしている様子だ。


「カザドおじ様、ただいま戻りました。あ、ラングくんも戻って来たんですね」


 ちょうど良いタイミングでソニアが戻ってきた。


「おかえり、ソニア」


「ソニア嬢ちゃんちょうど良いところに戻ってきたな! 例の物は手に入ったか!?」


「はい、黒竜の喉仏のどぼとけを取ってきました」


「よしよしよし! 黒竜の喉仏を使うと最高の火力が出せるんじゃ。それにしても、S級冒険者でも難しい事を簡単にやってのけるとはな」


 黒竜を倒してきたということか。冒険者ギルドで依頼を出せばかなりの高額になるだろう。俺の財政状況では支払うことが不可能な気がしてきたが、これは聞かねばならないだろう。


「ソニア、その黒竜の喉仏はいくらなんだ? 俺の武器を手に入れる為に取ってきたんだろう。一生かかっても払わせてもらう」


「私がラングくんの為に勝手に引き受けた仕事ですから、タダで構いません……一生かけて払ってもらうのも悪くはないのですが……」


 最後の方はもごもごと声が小さくなって聞こえなかったが、無料で良いというので金の無い今は一つ借りということにさせてもらうことにした。


「ありがとう。この借りはいつか返すよ」


 俺とソニアが見つめ合っていると、カザドさんが残念そうな表情でこちらにやって来た。


「この鉄喰いの核の大きさではせいぜいショートソードくらいしか作れんわい。もうちょっと量があれば最高の武器を作れるんだがのぉ!」


 俺はアイテムボックスから更に鉄喰いの核を取り出してテーブルに置く。


「どうぞ」


「何!? どういうことじゃ!」


「まだまだあるぞ」


 テーブルの上に山盛りに鉄喰いの核を積み上げた。


「鉄喰いが大量に居たというのか? いや、そんなはずはない! おぬしは何をしたのだ!?」


「まぁ、いいじゃないか。そんなことよりも、この量で作れそうか?」


「これだけの素材があれば、あれもこれも何でも作れるぞ! 夢のようだ!」


 カザドは大喜びで工房の炉へ鉱石を運んでいった。カザドを追いかけていくと炉に黒竜の喉仏をセットしている。カザドが魔力を流すと、黒竜の喉仏から黒い火炎が吹き出た。


「この火力が必要なんじゃ」


 カザドは鉄喰いの核を炎に当てて熱し、ハンマーで叩き始めた。ポロポロと核の表面から何かが剥がれ落ちる。


「鉄喰いの核には不純物も多く含まれているからのう。こうやって熱しながら叩いて不純物を取り除くんだ。この作業には時間がかかるぞ。武器が完成するまでは1ヶ月はかかるだろう」


「そんなにかかるのか。じゃあ、俺はダンジョンにでも篭もろうかな」


「私も一緒に行きます。と言いたいところですが、実は先程魔王軍の使者が来て魔都に戻らなければならなくなりました」


 ソニアがとても残念そうに言った。


「そうか。ソニアにも職務があるだろうし、仕方がない。ここまで手伝ってくれてありがとう。もし俺が納得できる強さになったら、ソニアに会いに行くよ」


 ソニアは俺の言葉を聞いてハッと顔を上げる。


「魔都で待ってますから、必ず来てくださいね」


「ああ、分かった」


 ソニアは迎えの魔王軍の馬車に乗ってダークドワーフ地下要塞を去っていった。


 宿に戻った俺はこれから何をしようか考える。


 レベリングやパイソンの確認、アイテム探しなど色々と考えて見たが、とりあえず鉄喰いを討伐したことを冒険者ギルドに報告したほうが良さそうだという結論に至った。

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