021 キングスライム
キングスライムの身体には生徒達が取り込まれつつあった。まだ身体の半分ほどが外に出ている為、呼吸は出来ているだろう。生徒の一人が俺に気づいた。
「そこの冒険者の方、お願い助けて!」
こちらに大声で呼びかけてくる。キングスライムに見つかってしまうので、静かにしてほしいんだけどな。
「私は領主の娘なの! 助けてくれたら出来る限りのお礼をするから! 早く助けてええええ!」
仕方がない、俺は急いで倒すことを決心した。
「パイソン、ファイアーボール!」
試しにファイアーボールを撃ってみたが、キングスライムの一部が少し飛び散るだけで終わった。いや、終わりではなかった。キングスライムの反撃の始まりだった。
「……ブニョン!」
巨体が飛び上がり、俺は黒い影に包まれる。
「まずい! のしかかりか!」
俺はとっさに飛び退いたが、間に合わなかった。脚がキングスライムの下敷きになってしまった。動けない上に骨折もしてしまったようだ。
「ファイアーボール!」
ドォンッ!
自分の脚に乗っているキングスライムの一部にファイアボールを放つ。自分の脚も無事ではないが、なんとか抜け出すことに成功する。
「アイテムボックス」
アイテムボックスを開き、上級ポーションを取り出して脚にかける。脚の火傷と骨折が治った。
「ふぅ、少し危なかった……な!?」
「……ブルルンッ!」
今度はキングスライムから無数のスライムが上空に飛び出した。その直後、スライム達は
「ファイアーボール5連射!」
ドドドドドォン!
ファイアーボールで砕けた氷柱がキラキラと降り注ぐ。それを見た俺は良い方法を思いついた。呪文をパイソンの書に書き込む。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
class SandShot:
type1 = '砂'
action1 = '飛翔'
action2 = '拡散'
def shot():
print(self.type1 + 'が' + self.action1 + 'し' + self.action2 + 'する')
class IceShot(SandShot):
type1 = '氷'
for count in range(10):
iceShot = IceShot()
iceShot.shot()
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
サンドショットを継承してアイスショットの魔法を創造した。ついでに連射もする。
「アイスショット10連射!」
キングスライムに向けてアイスショットを連射する。ただし、生徒達には当たらないように注意する。キングスライムは段々と動きが鈍くなる。
「アイスショット10連射!」
「アイスショット10連射!」
「アイスショット10連射!」
ついにキングスライムの半分が凍った。俺は魔剣テンペストブリンガーをアイテムボックスから取り出し、両手で握ると全力で凍った部分を叩き斬る。
バキィン!
キングスライムは半分の大きさになった。
「ファイアーボール!」
砕けた部分をファイアーボールで焼き尽くす。あとは同じ作業を繰り返すだけだ。何度か同じ作業を繰り返し、もう少しで倒せるというところでキングスライムの行動が変わった。
「ズズズズズ……」
「きゃああああああああ」
俺を狙うのではなく、生徒達を先に取り込んで吸収しようとしている。
「させるか!!」
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
for count in range(100):
print('スライムを掴む')
print('スライムを投げ捨てる')
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
とっさに呪文を書き込む。自分の限界速度を超えた動きで生徒についたスライムをちぎっては投げ捨てる。
「ファイアーボール!」
投げ捨てたスライムが集まる前に燃やす。それを繰り返してなんとか生徒達を守りながらもキングスライムを倒すことが出来た。
『レベルアップ! レベルが637になりました』
スライムでベトベトになっている生徒にタオルと中級ポーションを渡す。
「ありがとうございます。それと、助けてくれたこともありがとうございます」
「いや、君達の先生であるマーシャさんから依頼されて助けただけだ」
「マーシャ先生は無事ですか!?」
「ああ、20階で待っているはずだ。少し休憩したら、20階に降りよう」
生徒達を休憩させ、周りを確認すると魔導書がドロップアイテムとして落ちていた。
「これはキングスライムが落としたのか? リタへの土産として貰っていこう」
魔導書を回収した俺は生徒を護衛しながら20階まで降りた。生徒達は無事に先生と合流することが出来、安堵した様子を見せている。そのまま全員を護衛しながらダンジョン出口まで降りた。生徒達が精神的に衰弱していることもあり、休憩しながら降りた為、3日間もかかってしまった。
「あの……後日お礼に伺いたいので住所を教えていただけますか?」
マーシャさんが俺のほうに近づいてきたと思ったら、そんなことを聞いてきた。
「いや、礼はいらない」
「それでは困ります! 女学園の沽券に関わりますので!」
ここで押し問答しても時間の無駄だな。俺は宿屋を教えることにした。
「たしか、宿屋アカシア亭だ」
「分かりました。今度必ずお礼をしに参ります」
「そんなことより、詳しい話を聞いていなかったな。何があったんだ?」
ダンジョン内では危険だった為、詳しい話が聞けないでいたのだ。
「あの時、私は生徒達を引き連れて20階で実習訓練を行っていました。しかし、大量のモンスターをトレインしてきた冒険者にモンスターをなすりつけられてしまい、私一人ではどうにもできず生徒達と離れ離れになったんです」
「そういえば、そんな奴らを見た気がするな」
あの時は、俺がモンスターを倒せたから問題なかったが、あれはモンスターを使った殺人未遂だ。ギルドに報告する必要がある。
「この件は、俺から冒険者ギルドに報告しておく」
「よろしくお願いします。私はこれから生徒達を送り届けなければならないので……」
「ああ、じゃあ俺はここでお別れだ」
俺は冒険者ギルドに行き、今回の事件について全てを報告した。
「その冒険者達は見つけ次第、冒険者資格を
ギルドマスターは職員に指名手配の手続きをするように指示した。指名手配の顔は俺の記憶にある冒険者二人の似顔絵を描いてもらった。
「今回の件、本当に申し訳なかった。これは礼金だ。受け取って欲しい」
「あ! ちょっと待て! 金貨は不味い!」
ギルドマスターからどっさり金貨の入った革袋を渡されそうになり、俺は焦って革袋を取り落してしまう。しかし、勝手にアイテムボックスが開き革袋がアイテムボックスに吸い込まれていった。
「アイテムボックス持ちだったか。落としそうになった革袋をアイテムボックスで受け取るとは、なかなかやるな」
ギルドマスターは何か勘違いしているが、あえて突っ込まないでおこう。貧乏スキルのせいでアイテムボックスに入った金貨は消えるのだ。あぁ、勿体ない。
「あぁ、俺はまた魔導ダンジョンに行ってみる。何かあればまた報告するよ」
「よろしく頼む」
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