016 ゴールドダンジョン崩壊の影響<ラクネ視点>

「どうしてゴールドダンジョンが崩壊するのよ!?」


 ゴールドタウンの魔族塔ではラクネの絶叫が響き渡った。


「こんなことが魔王様に知られたら殺されてしまうわよ!」


 わたくしは何か良い案が浮かばないかとぐるぐると部屋の中を歩き回ったが良い案などあるわけもなくただただ時間だけが過ぎていった。

 既にダンジョンは崩壊してしまったのだ。そこに私の部下が報告に現れる。


「ラクネ様、ゴールドマンから今回の件について緊急に会議を行いたいと連絡が……」


「そうね。ここはゴールドマンと話し合うのが一番かもしれないわね。分かったと返事をしておいてちょうだい」


 私は急いで中央塔へ向かった。会議室に入るとゴールドマンが待っていた。


「大変な事になってしまったな」


「ええ、そうね。まさかゴールドダンジョンが自然崩壊するだなんて……」


 チッチッチッ


 ゴールドマンは指を振る。


「いいや、自然崩壊ではない。我々はその事について話し合いに来たのだよ」


「どういうことなの?」


「10階層で年に一度だけ現れるボスが居るのを知っているか?」


「ええ、もちろん知っているわ」


「そのボスが倒された直後に崩壊は始まった。そしてボスを倒したのは、こいつだ。こちら側の冒険者が目撃した」


 ゴールドマンが似顔絵を差し出す。

 私はその似顔絵を見て驚愕きょうがくしてしまった。


「……ラング!? そんな馬鹿な! あいつは死んだはずよ!」


「知り合いのようだな。我々は今回の件について、責任は魔族側にあると考えている。こちらが受けた損害賠償を請求させてもらう。断るのであれば戦争も辞さない構えだ」


「ふざけないで! 不可侵の法を忘れたの!?」


 私は殺気を込めた目でゴールドマンを睨みつける。しかし、ゴールドマンは全く怯むことなく返事をする。


「不可侵の法はゴールドダンジョンから得られる利益あって初めて成り立つのだ」


 バキッ!


 私は怒りのあまり目の前の机を叩き割った。愚かな人間ごときに舐められるわけにはいかない。


「請求は拒否させてもらうわ! 愚かな人間どもめ、後悔するがいい!」


 ゴールドタウンで戦争が始まった。


 魔族塔に戻った私は部下に指示を出す。


「人間側はダンジョン崩壊の責任を我々魔族になすりつけた! 卑怯な人間共を一匹残らず殺せ!」


「ラクネ様、戦争が始まったのですか?」


「そうよ。だけど、魔王様への報告はしなくてもいいわ。私がなんとかする」


「そ、そうですか」


「ただし、ラングは許さないわ! この街に居るはず、絶対に見つけ出しなさい!」


「はっ!」


 しかし、ラングは既に旅立っており、見つけることは出来なかった。結果を聞いた私はふがいない部下を叱責し、悔しさから絶叫するほかなかった。

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