014 ゴールドダンジョン

 俺は1人でゴールドダンジョンまで来た。リタはログハウスで留守番である。何故ならゴールドダンジョンは50レベルに満たない冒険者は入れないからである。ちなみにリタは冒険者ですらない。


「ゴールドダンジョンは10階層だったな。どんどん進んでいこう」


 1階層は多くの冒険者であふれかえっていた。


「冒険者多すぎだろ……モンスターより多いぞ」


 モンスターが出現すると冒険者がむらがり、モンスターはすぐに討伐される。その光景がそこかしこで行われている。


「お!」


 運良くすぐ近くに金色のサソリが出現した。俺は反射的にテンペストブリンガーで斬りつけると一撃で倒すことが出来た。小さな金塊がドロップする。試してみると無事に小さな金塊をアイテムボックスに入れることが出来た。


 次の金色のハチ型モンスターが近くに発生したが、俺よりも近い場所に居た冒険者がハチ型モンスターを倒した。


「なかなかの競争率だな。よし、パイソン!」


 パイソンの書に呪文を書き込む。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


for count in range(10000):

  five_senses = input()

    if five_senses == '敵を見つけた':

      print('敵に近づいて斬る')

      print('ドロップアイテムをアイテムボックスに入れる')


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


「まぁ、10000回も倒せばいいんじゃないかな? 実行!」


 この時、俺は深く考えずに10000回という回数を設定してしまった。


 金色のありのモンスターが現れる。俺は人間の反射神経を超える動きでモンスターに近づき一瞬にして斬り殺す。モンスターが出現してから1秒以内に全てが終わっていた。


「予想通りだけど、いい感じにモンスターが狩れるな」


 モンスターが出現する。誰よりも早く狩る。ドロップアイテムを回収する。この一連の動作が無意識に繰り返された。


『レベルアップ! レベルが202になりました』

『レベルアップ! レベルが203になりました』

『レベルアップ! レベルが204になりました』

 …………


「あれ? これ勝手に初期位置から移動してるな」


 モンスターが湧くとそこに攻撃しに行く為、勝手に位置が移動してしまう。そして、今ちょうど下の階層に進む階段の中にモンスターが現れた。


「このままだと階段に突っ込むような……ま、待て!」


 パイソンの書に言ったところで止まるわけもなくモンスターに攻撃を仕掛けてそのまま階段を転がり落ちる。


「イテテテ」


 そして、階段下には既にモンスターが湧いていた為、更に移動と攻撃を繰り返す。


「これもしかして10000回繰り返している内にどんどん深い階層に移動してしまうのでは……?」


 俺の予想は的中してしまった。


『レベルアップ! レベルが286になりました』

『レベルアップ! レベルが287になりました』

『レベルアップ! レベルが288になりました』

 …………


 レベルが上がり、階層は深くなっていく。そして、10階層に到達した。


「ここは10階層か……たしかゴールドダンジョンは最高でも10階層だったはずだ。ってことは最深部か」


 この階層には熟練冒険者のような雰囲気を持つ者が多数見受けられた。だが、何もせずに立ち尽くしている。


「なんでみんな棒立ちなんだ? 何かを待っているのか? あとモンスターが全然湧かないな」


 俺は冒険者たちに理由を聞いてみようかと、近づく。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……


 地面が揺れ、地鳴りが聞こえてくる。


「なんだ? 何が起こるっていうんだ?」


 俺が疑問に思っていると、横に居た冒険者パーティ達の掛け声が聞こえてきた。


「来るぞ! 一年に一度だけ出現する特別なモンスターだ! みんな構えろ!」


 マジですか? どんな敵なのかワクワクしながら見渡すと、地面が割れて金色の巨大ゴーレムが地面の中からい出てきた。それと同時に、大量の小型ゴーレムも湧き出てくる。


 その瞬間、俺の身体は勝手に動いた。まだ、10000回実行が終わっていなかったらしい。俺は一番近くに沸いた小型ゴーレムに一足で接近すると魔剣を一閃した。


 ボス狙いの冒険者達は巨大ゴーレムに挑むが、全く攻撃が効かず吹き飛ばされているのが見える。俺も助けに行ってやりたいところだが、パイソンのスキルで自動的に一番近い小型ゴーレムを攻撃してしまう為、助けに行くことが出来ない。


「ぎゃあああああああ!」


「ひいいいいいいい!」


 冒険者のほとんどが吹き飛ばされ、地面に倒れている。俺は小型ゴーレムとの戦闘の合間にポーションを取り出しては地面に置いていく。冒険者達が拾って飲んでくれることを祈るのみだ。


 周囲に居た小型ゴーレムをなんとか全て殲滅した。俺の目の前にはもう巨大ゴールドゴーレムしか残っていない。


「どこの誰だか知らないが、応援するぞ!」


「ポーションをくれたのはあいつか! ありがとう! 俺達の敵を討ってくれ!」


 何故か周りの冒険者達から声援がかけられる。だが、俺はそれに応える余裕も時間もない。パイソンのスキルがまだ有効だからだ。


 瞬時に最後の巨大ゴールドゴーレムに接近し、目にも留まらぬ剣速でテンペストブリンガーの連撃を放つ。


 ギヂィーーーーン!


 あまりに速い連撃はまるで1回斬っただけのような音に聞こえる。


 一瞬、ゴールドゴーレムの動きが止まったかと思うと、ガラガラと細切れになって崩れていく。


『レベルアップ! レベルが370になりました』

『ダンジョン攻略報酬 経験値を獲得』

『レベルアップ! レベルが410になりました』

『スキルレベルアップ! パイソンのレベルが4になりました』


 金塊(超特大)がドロップアイテムとして出現し、無意識にアイテムボックスに回収された。


「ふぅ、なんとかパイソンのスキルは終了したようだな」


 パイソンの書を開き、念の為に呪文を消す。ふと、周りを見ると多くの冒険者達から注目されている。


「俺達は助かったのか!?」


「あの男がやってくれたぞ! うおおおおお!」


「ゴールドゴーレムをソロで、しかも一瞬で倒すなんて化け物かよ」


 様々な言葉が聞こえてくる。これ以上目立つ前にさっさと帰ろうかと考えていると


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……


 さっきよりも強い揺れを感じる。今度は何だ?


 周りの冒険者達の様子を伺うが、前代未聞ぜんだいみもんの現象らしい。天井から岩が落ちてくる。これはもしかして……。


「ダンジョン崩壊だ! 逃げろおおおお!」


 誰かが叫んだ。これがごくまれに起こると言われるダンジョン崩壊か。俺も落ちてくる岩を避けながら避難を開始した。



 ――なんとか、ゴールドダンジョンを無事に脱出した。


「ふう、まさかダンジョン崩壊に出会うなんて思わなかったな。レベルも上がったし、ログハウスに戻ろう」


 ログハウスに戻り、リタにダンジョンでの出来事を説明した。


「ダンジョン崩壊ですか! 私も見たかったです」


「間違っても冒険者の前でそのセリフを言ってはいけないぞ。冒険者はダンジョンで生計を立てているんだからな」


「気をつけます……」


「ほら、これは小遣いだ。明日はまたゴールドタウンに行くぞ」


 小さめの金塊を渡す。


「ありがとうございます! 大事にしますね!」


 換金して使えという意味だったんだけど、まぁ、いいか。自室に戻り、筋力トレーニングをしてステータスを確認して眠りについた。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 ラング 17歳 男

 レベル:410

 HP:4100(10✕410)

 MP:6150(15✕410)

 攻撃力:1230(3✕410)

 守備力:820(2✕410)

 器用さ:410(1✕410)

 素早さ:1640(4✕410)

 知 性:410(1✕410)

 幸 運:410(1✕410)

 スキル:パイソンLV4、貧乏LV10、剣術LV2

 バ フ:攻撃力向上LV1 (+50%)、守備力向上LV1 (+50%)、素早さ向上LV1 (+50%)


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