013 ゴールドタウン

 俺とリタはゴールドタウンに到着した。街に入るだけで税を取られてしまい、元々少なかった所持金はほぼ0となった。


「通行税が高すぎますよ!」


 リタが怒っている。


「まぁ、いいさ。俺には物々交換という秘策もあるしな。まずは冒険者ギルドで情報収集をしよう」


 ダンジョンに行く前に情報を集めるのは基本中の基本である。


 街並みを見ながら歩くと屋台で飲み物や食料、雑貨などが並んでいる。


「ただの水が50銅貨!? 高すぎです」


「オーク肉の串焼きが1銀貨もするのか。こんな相場で住民はよく生活していけるなぁ」


「本当ですよ。私の村だったら水なんて無料ですよ!」


 冒険者ギルドに到着した。ギルドの受付で質問をする。


「ゴールドダンジョンに行きたいのだが、情報を教えて欲しい」


「分かりました。まず、この街の冒険者はゴールドダンジョンで稼いでいます。クエスト依頼がないこともないですが、実力がある冒険者はゴールドダンジョンを優先する傾向があります」


「ふむ」


「つまり、ゴールドダンジョン内は多くの冒険者がモンスターを奪い合っている状況ということです」


 なるほど、現在の状況を知らずにゴールドダンジョンに行っていたら無駄な争いや罠にかかっていたかもしれない。


「その情報はありがたいな」


「ゴールドダンジョンは10階層まであります。出てくるモンスターは全て金で出来ており、ドロップアイテムも金塊のみです」


 金塊か。貨幣かへいではないから多分アイテムボックスに入るはずである。


「次に、ゴールドダンジョンに入るには入場料として金貨1枚が必要となります」


「え!?」


 俺は貧乏スキルにより、金貨1枚以上を所持することが出来ない為、とても驚いてしまった。


「えぇ!?」


 俺が驚くと、俺が驚いたことに受付嬢も驚いた。


「いや、すまない。入場料が免除されるケースはあるか?」


「あります。魔王軍に所属している方は無料となります」


 魔王軍か、俺は追放されたからなぁ。でも、正規の手続きで解雇されたわけじゃないからイチかバチか申請してみるか。今でも所持している魔王軍のタグを見せてみる。


「はい、確認しました。ラング様ですね。では、こちらが通行証です」


 なんと無料で通行証が手に入ってしまった。


「ありがとう。ゴールドダンジョンで稼がせてもらうよ」


「お気をつけて」


 冒険者ギルドを出てリタと共に今日の宿を探す。ショッピングもしたいが、先に宿を探すのは鉄則だ。宿を見つけて店主に話しかける。


「物々交換で宿に泊まらせてもらえないだろうか?」


 秘技・物々交換である。


「ここでは金が全てなんだよ。金がないなら出ていきな!」


 俺の秘技はあっさりと打ち砕かれた。


 宿は諦めて、武器防具屋、併設へいせつされた道具屋で物々交換をもちかけてみた。


「ここでは金が全てなんだよ。金がないなら出ていきな!」

「ここでは金が全てなんだよ。金がないなら出ていきな!」


 しかし、全く同じセリフで追い返された。こいつらは同じセリフで追い返す訓練を受けているのだろうか。ついでに料理屋も同じ結果だった。


「ラングさん、またダメでしたね……」


 リタが悲しそうに言う。


「まぁ、いいさ。一応こうなることも想定してアレを用意してあるしな」


 それを聞いたリタが笑顔に戻った。


「そうですね! 私達にはアレがありますよね!」


 俺達はゴールドタウンを出て、野宿をすることにした。街の周りにはテントや雑魚寝で野宿をするみすぼらしい人々が多く居た。俺達は見られないように、少し離れた森の中に入った。


「パイソン、アイテムボックス」


 ドズーン!


 目の前に大きなログハウスが現れた。これが俺達が言っていたアレだ。中に入ると個室が2部屋とキッチン、食堂、リビングルームがある。家具も全て完備している。


「うわぁ、広いですね。木の香りも最高です」


「森の中だから宿より少し危険だが、テントよりは100倍いいよな」


 アイテムボックスからライ麦パン、野菜大盛りシチュー、ソーセージ、ミノタウロスの串焼きなどを取り出し、食堂のテーブルに並べていく。


「好きなだけ食べてくれ。おかわり自由だぞ」


「やったー! 宿の食事はいつも余り物だったから冷めてて美味しくなかったんですよ〜」


 食事を終えると次は風呂だ。村では井戸水でお湯を作り布で身体を拭く程度だが、俺は四天王のラクネが使っていたシャワーと風呂を参考にして浴室を作ったのだ。お湯はアイテムボックスから無限に出せるから問題ない。

 試しにリタにシャワーと風呂を試してもらった。


「これ無しの生活はもう考えられません!」


 気に入ってくれたようだ。風呂に入った後は個室で自由に過ごす。各部屋にはしっかりとしたベッドを設置してある。ベッドは自作だ。チョンチョンという名の夜にしか現れない鳥を捕獲し、その柔らかい羽毛で作った特別製だ。とても素早い鳥だがif文を使うことで簡単に捕まえることが出来た。


 筋力トレーニングをしてベッドに入ると一瞬で眠ることが出来た。宿に泊まらなくとも快適な生活を送ることが出来ることがわかった。


「ラングさん! 昨日の夜はぐっすり眠れて最高でしたよ〜」


 リタも大満足なようだ。ログハウスを作って良かったな。さて、今日はゴールドダンジョン攻略だ。

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